
昨日、mecc賞の授賞式がありました。スピーチをということだったので、ミツバチから託された手紙を読んできました。
ミツバチによると、これを機会に時々頼むわね、ということなので新カテゴリー「みつばちからの手紙」を設けることにしました。
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ミツバチからの手紙
人間のみなさま、こんにちは。
今日は、よい機会なので、私たちミツバチからのメッセージをお伝えさせていただきます。
私は一介の働き蜂です。
今、花蜜と花粉集めに毎日飛び回っています。
念のために言っておきますと、働いているのは全部私たちメスです。完全女系社会です。
♂がなにをしているかって?それはまたの機会に。長くなりますので。
私も巣の中のみんなにようやく貢献できる年回りになりました。というのは、私たちの寿命は、今の時期、だいたい40日間。後半の20日間ほどを蜜と花粉を求めて飛び回ります。
私は昨日から外に出ることが許されたので、すでに年増です。人間でいえば、この手紙を読んでもらっているおばさんぐらいの歳かもしれません。願わくば、花の下にて・・・いえ、花の上にて命終えたいと願っています。
私は、花がたくさん咲く一年で一番忙しい時期に生まれることができて幸せだと思います。
今日は、ぜひ、人間のみなさんに知ってもらいたいことがあります。
人間のみなさんは、私たちがつくるハチミツが大好きなですよね。
だから、ミツバチといえば、ハチミツ!と思っていただいているようです。
でも、私たちはハチミツだけで生きている生き物ではありません。
ハチミツは糖質で、動き回るエネルギーになります。だから、花からいただく蜜はとても貴重なものです。その花蜜を私たちの体に貯めて運び、水分を飛ばし、酵素で分解させてハチミツをつくります。
そのハチミツと同じくらい大切なものが私たちにはあります。
毎日絶対に必要なもの。それは花粉です。
みなさんが女王蜂と呼んでいる私たちのお母さんは、毎日1000個以上卵を産みます。ほぼ自分の体重と同じぐらいなんですよ。そのお母さんのパワーがどこからくるのか。それは、私たちがローヤルゼリーと呼ばれるものをお母さんに毎日食べてもらっているからです。人間の女性が、お肌に塗ったり、飲んだりしていますが、それがどんなふうに影響するかは知りません。一説によると太るという説もありますのでご用心ください。
そのローヤルゼリーの原料が花粉なんです。卵からかえったばかりの幼虫にあげるミルクも花粉が原料です。
でも、ハチミツの貯蔵場所と卵の産卵場所だけでほぼ巣の中はいっぱいだから、花粉はなかなか十分貯めておけません。ですから、毎日、毎日、必死で集めなければなりません。
私たちを見かけたら、ぜひ、足を見てくださいね。花粉団子と呼ばれるものを両足に着けています。体についたのを手足で足に集めて運ぶんです。重いんですよ。体重が90ミリグラムしかないのに、花粉は両足で40mgになることも。おなかは蜜を満タンにすると40mg。ほぼ体重と同じ重さのものを1日に巣と花の間を10回ぐらい往復しながら運んでいます。着地するときに重くて転がってしまうほどです。
最近、なぜかビルの屋上に私たちの巣箱を置くのが人間界では流行っているようです。時折、風の便りに苦労している仲間のウワサを聞きます。風は強いし、ビル街だと花は遠くまで行かないとないし。排気ガスも多いし、アスファルトやコンクリートの照り返しは強いし。人間も、都会の夏の暑さにはかなりまいっていますよね。ヒートアイランドなんていって。
私たちなら、そんなところに巣をつくろうとは思わないけれど。
必死で採ってきたハチミツは採れたと喜ばれるけれど、私たちには苦労の種が増えただけです。
どこでも巣箱を置かれたら、ハチミツを採りますよ。だって、ハチミツを得なければ動けない。動かないと花粉が採れない。花粉がないと巣を維持できませんから。それはそれは必死なんです。まさに命がけです。
農村に住んでいる仲間は仲間で、以前ならレンゲや菜種がたくさん咲いたけれど、最近はほとんどありません。山は伐採されて、大好きな花を付ける雑木林はなくなるし、やたらと住宅地になったりして、本当に花を探すのは大変なんだそうです。
そんなとき、つい、花粉を採りに田んぼの稲の花に行ったら、カメムシのやつが来ていて、出会ってしまう。カメたちが、お米の実が固まらないうちに汁を吸うときに口を突っ込んで吸ったあとが黒い斑点になってしまう。だから農家はカメ退治のために農薬をまく。それを時々浴びてしまらしいです。
たぶん人間は「そんなに花がない?けっこう咲いているでしょ」なんてのんきに考えるんでしょうけれど、蜜が出る花、花粉が採れる花は限られています。それは私たちミツバチだけじゃなく、私たちの仲間のハナバチたちだってみーんな苦労しているんです。
人間の都合でずいぶん環境が変わってしまって、本当に迷惑しています。それは人間が人間だけの心地よさを追求してきたから、ですよね。
私たちは、みなさんにハチミツだけじゃなく、蜜蝋やローヤルゼリー、プロポリスなどたくさん生産し、人間のみなさんはそれをいろいろに利用しています。
私たちは、リンゴやサクランボ、イチゴやメロン、玉ねぎやニンジンなども受粉もしています。
どうかもう少し私たちが生きやすい環境をつくってもらえないでしょうか?
たまには私たちの身になって考えてみてください。
小さな小さな生き物ですが、私たちミツバチは500万年を生き抜いてきました。
人間よりも300万年も先に生まれたんですよ。
その私たちの仲間がどんどん減っています。
アインシュタインという人間界では尊敬されている学者さんが、「ミツバチが消えたら、人類は4年以内に滅びる」といったと言われています。さすが偉い人の言うことは違うと思いました。
みつばち百花のみんなは、本当に私たちのことが好きみたいで、なにがそんなに気に入られているのかわからないですが、とりあえず無理な注文をしない人たちなので助かっています。私たちが生きやすい環境をみんなでつくろうと呼び掛けてくれています。
そうしたら、岩手や福島、国分寺や国立でやろうやろう!と花を増やしてくれる人がどんどん増えています。ハチミツを採る前にまずは花を増やそうって。うれしくて泣けます。
花が増えたら、きっと人間にもいいことがたくさんあると思います。
人間同士が仲良くなれるだろうし、なによりも花が咲いている風景は美しいですから。
国文学者の中西進さんという方が「幸福は、やまとことばで「さいわい」で、昔は「さきはひ」といったとか。「さき」は花が咲いていること、「はひ」は這うことで、幸福とは花が咲き広がり、咲き続けることだそうです。
ミツバチの幸せを考えることはきっと人間の幸せを考えることになると思いますよ。
そろそろ人間以外の生き物の幸せを考えてみる時期ではないでしょうか?
私たちはいつの時代も変わらなかったし、これからも変わりません。
そして、人間とこの先もずっと一緒に歩んでいきたいと思っています。
人間が農産物を育てる、それを私たちが蜜や花粉をもらって受粉する、そして花は再生される、そんな幸せな関係をこれからもずっと続けられたらと心から願っています。
みなさんと花畑で会える日を楽しみにしています。