2012年08月16日

シェーンブルン宮殿とミツバチ

ウィーンに出かけているみつばち百花のメンバーから、シェーンブルン宮殿の動物園でBee House発見!とのレポートが届きました。

「シェーンブルン宮殿にある動物園に行きました。

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ここは1752年に創設した世界最古の動物園だそうです。パンダが2010年からいてとても人気。でも、パンダはだらっとしていてしっかり見えませんでした。

そこにBee House というミツバチの展示場がありました。外には巣箱もあって、シェーンブルン宮殿の庭園にここのミツバチが飛んで行っています。

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ここで採れるハチミツを自動販売機で売っていました。

写真 2.jpg


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Bee House 外から見るとこんな感じ、上には大きなミツバチ模型が木からぶら下がっているけれど、なんか大きくてスズメバチみたいでした。

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壁にはミツバチの詳細が展示、ドイツ語と英語で。

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これは巣箱のミツバチの出入口に書いてある絵を並べています。これ自体はミツバチは出入りしていなかったので、展示用と思われます。そういえば、1995年にアピモンディア(国際養蜂会議)のスイス大会に参加した時、実際にこのような巣箱を使っている養蜂家を訪問したことがありました。

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Bee Houseの出口にある六角形のいすがあったり、展示場全体が六角形になっていました。
Bee House前にある広場にはミツバチモチーフの乗り物もありました」


動物園の中にちゃんとミツバチの居場所があるなんて、さすがにウィーンですね!

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2011年05月11日

トルコ映画「蜂蜜」を見てきました

ベルリン国際映画祭で金熊賞を受けたトルコ映画「蜂蜜(原題:Bal)」の試写会に行って来ました.セミフ・カプランオール監督のユスフ三部作の第3部として,主人公ユスフの壮年期を描いた「卵(原題:Yumurta)」(2007),青年期を描いた「ミルク(原題:Sut)」(2008)に続く,幼年期の「蜂蜜」(2010)です.監督インタビューでは,この3作は,主人公の成長(年代別の様相)を年を重ねるという方向ではなく,内面に向かう順序で作ったとのこと.その意味では3作見終わらないうちに論評を書くのは気が引けますが,トルコの養蜂事情を中心にして紹介したいと思います.では,進行を辛口ミツバチに手伝ってもらって始めましょう.

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コピーライトマーク 2010 Kaplan Film Production & Heimatfilm GmbH + Co KG



minilogo.pngトルコといえば,世界で一番美味しいハチミツの産地といわれてるね(ご本人たちがいうようだけど).
そうだね.もっとも隣のギリシャでも同じことを言うんだけどね(仲のいいことで).実際,トルコの養蜂は盛んで,2002年には,巣箱の数では世界の実に8%あまりを保有している(Guler and Demir, 2005).一方でハチミツの生産量は世界の5%程度にとどまり,輸出も全生産量の1/7ほど.国内消費が多いので,日本ではまずお目にかかれないかな.国内の移動養蜂が盛んで,それは地域ごとの気候や地勢を活かした多様なハチミツが生産されることによるらしい.ギリシャに近い,エーゲ海を臨むような地域のハチミツにはハーブ系のもの,地中海側では柑橘類などを蜜源とするもの,いわゆる小アジアとも呼ばれるアナトリアでは甘露蜜も採蜜できる.映画が撮影されたチャムルヘムシンは,トルコでも最も養蜂が盛んで,全ミツバチの1/4がいる黒海沿岸地方に位置している.ただ,伝統養蜂は,この地域でもたった2%程度ということだから,映画で見るものは実は少数派ということだね.自然条件では,野生の色黒のコーカサスミツバチ(コーカシアン,セイヨウミツバチの一亜種)が生息している.映画に登場したのも黒い蜂だった.

minilogo.pngタイトルが「蜂蜜」ということで,主人公ユスフの父親は,そのコーカサスミツバチのハチミツを伝統的に採る養蜂家という設定だね.
どの程度,専業的なのかはわからないけれど,母親は茶園を手伝っているくらいで,家計はハチミツ頼りのようにも見える.トルコは世界でもハチミツの価格が高い方で,1kg当たり15ドル(近代的に生産されたもの)で取り引きされている.その価格でもよく消費されていて,一人当たりの年間消費量は800gを上回っている(Guler and Demir, 2005).ただ,ハチミツの生産量に較べて蜜ろうの生産量が少ないのは巣蜜を食べる習慣があるからだといわれるくらい,巣蜜好きな国民だとか.近代養蜂で生産された巣蜜は,普通のハチミツ(巣から分離してろ過したもの)の倍以上,30〜35ドル/kgにもなる.それがさらに伝統的な丸太巣箱のものだと100ドル/kgにもなる(Kandemir, 2010).黒海沿岸地方で薬用にもなるハチミツだとさらに高価(200ドル超)なものになるらしいから,これがユスフの父親が伝統的な方法にこだわる理由だろう.映画の中でも,母親が「ユスフの吃音が治らないわね」と問いかけるのに対して,父親が「黒崖に巣箱を置いてみたい」と切り返し,それっきりミツバチの話題になる.そんなことが許されるほど,この家ではハチミツによる(ばくち的な)収入への期待が高い.そうした金脈を追うような父親の生き方が,子どもであるユフスにとっては男らしく魅力的に映るのだろう.

minilogo.png実際に,木の上で採蜜をするシーンがあったね.
ここは背後からの撮影で,おそらく俳優さん自身ではなかったからだろうか,手の動きとかに迷いがなかった.丸太巣箱の中の巣はすべてを切り取るのではなく,基本的にハチミツが入っている部分を狙って採っているようには見えた.ユスフもお手伝いで,木の下にいて,父親の指示通り,火をつけた燻煙器や,切り取った巣を入れるバケツをロープに結びつけてた.父親はそれをロープでたぐり寄せるという方法.ハチミツがたっぷり入った巣を入れたバケツが降ろされると,最初に味見をするのは自分とばかりに,でも,ほんのちょっぴりだけなめてたね.ハチミツの価値がわかっているって感じだ.

minilogo.pngそれにしても丸太巣箱をずいぶん高いところに置くんだね.
それはミツバチがもともと高いところに巣を作るからなのでは? この地域は年間の降水量が3000mmを超えるようなところだし,映画の中でも霧がかかったり,雨がちで,地面はいつも湿っている.セイヨウミツバチは湿っぽいのがきらいだろう? 養蜂家は,高い木の上に作業可能な場所(立てる程度だけど)を作って,その上に巣箱を置く.伝統的に行われてきたとはいえ,それなりに工夫が入った丸太巣箱は,木材も新しく,雨がちなこの地域からは想像しにくいほど内部はよく乾いていた.それも高さがあるからこそかなと思うけど.

minilogo.png養蜂の場面はそれほどなかったけれど,ミツバチ的に印象的なシーンは,テーブルの上に置かれた女王蜂の入ったカゴ.
確かに,しっとりした緑が印象の谷の風景や,実際の丸太巣箱から想像できる年代と,この女王蜂のカゴには時代感覚的なギャップがあるよね.でも,そもそもハチミツで儲かっているという背景があることも考えるべきだし(家の中にはガスコンロや冷蔵庫もあった),ストーリーの年代は,ユフスが日めくり(宗教標語とかが書いてある)を読み上げているときに2009年といっているので,まさに今.購入した女王蜂を丸太巣箱に入れに行くというのがこの養蜂の日常的なスタイルであるということなんだろう.実は,トルコでは養蜂の生産性の低さについて,古い女王蜂を使い続けることが原因だという指摘もある.そこで,政府公認のミツバチブリーダー(2002年には43業者)が年間12〜13万匹の女王蜂を生産している(Guler and Demir, 2005).そんな背景事情があるから,あんな山の中で伝統的な養蜂を営んでいるかのような一家のテーブルにも,女王蜂が届くということなんだろう.

minilogo.png親子での森の散策場面もあった.毒のある蜜までユスフが知っていて驚いたよ.
父親が息子に「この花は何?」と尋ねるときちんと答が返ってくる.ユスフはまだ小学校に入りたてで,普段は吃音ということもあって上手にはしゃべれない.授業でうまく音読や計算ができると「よくできました」バッジをもらうんだけど,それをクラスで最後に(少々先生の恩情もあって)もらえるくらいだし,母親とも言葉での会話ができていない.それなのに,父親と小声で話すときはちゃんと話せる.花の名前,蜜の色,味.やがては自分も養蜂家になりたいという職業的あこがれから,こうした知識は身についている(燻煙器も自分でつけてたし).それも印象深いね.

minilogo.png父親が深い山に入り,帰らぬ人となってしまう原因になったミツバチの異変.巣箱の中でたくさん死んでいたよ.父親ヤクプは泣いていたね.
トルコでは2006〜2007年に大量の蜂群損失が報告されていて,撮影地となった黒海沿岸東部地方では57%近いミツバチが失われた(Giray et al, 2009).雨がちなのが特徴のこの地域で,特に2006年秋は気象観測データからもうかがえるほどよく降ったようで,それが大きな要因であった可能性もある.けれど,はっきりしたことはわからないままで原因は特定されていない.ミツバチの病気やダニに関しては,この時期は思ったよりは大きな被害報告はないらしいし.ヤクプにすれば収入の道が断たれたという意味ではショックだったろう.原因がわからないので,怒りの向けどころがあるわけでもなく,死んでいるミツバチに対して気持ちが動いて,泣けたという感じかなあ.

minilogo.png最後に映画の評価もしておいてよ.
この映画を語ろうとすれば,1973年のスペインのビクトル・エリセ監督の「ミツバチのささやき(原題:El espiritu de la colmena=巣箱の精神)」を,どうしても比較に出さなきゃとは思う.主人公アナの父親は,ミツバチを飼っているけれど,それで生計を立てているという感じではない.父親のモチーフは,あの「青い鳥」を書いたメーテルリンクで,書斎で書いている文章は彼の著作「蜜蜂の生活」の各章の主要部分だった.ここでは,アナはミツバチへではなく,映画のフランケンシュタイン(姉に「あれは精霊だ」と吹き込まれる)に惹きつけられていく.少女らしい幻想を一つの通過儀礼としながら,父親が書き綴る,ミツバチの働き蜂の分業の話などを織り込んで,成長を描く.ミツバチ好きにはたまらない映画だった.共通点は親子の関係と学校というところか.風景はスペインらしい赤く乾いた土地で,今回の山間の雨がちな緑とは対照的だし.

minilogo.png前置きが長いよ.比較じゃなくてストレートに「蜂蜜」について.
もうそれは見てのお楽しみというしかないけど.どうしても三部作として見てみたいとは思う映画かも知れない.日本での公開は「蜂蜜」から始まるという事情はあるけれど,監督の制作意図とは別に,成長を追う見方をしたいと思った.この子(ユスフ)が大きくなったらどうなるのか,一家を支えるものが失われた家庭には何が起こるのか,それがユスフにどう影響するのか.もちろん,すべての年代のユスフが同じ時代を生きていることには無理がある.だからそれぞれの主人公3人を同一人物と見るかどうかは,見る側に委ねられている.秘密好きなのか監督自身はそれについてはコメントしていない.
映画の中でも,ユスフが夢の話をすると,父親が「夢の話は人に聞かれてはいけない」と耳元で話させ,さらに「その話は誰にもしてはいけない」と約束させるので,見ている側にもこの内容は永遠に封印された秘密になってしまう.後半で母親が夢を話すシーンがあり,ユスフがどぎまぎした表情で母親を見る.余談だけど,子どもは父親と母親の差をそういう部分で感じ取るんだなあと,子育て中の我が身では感じるね.
どの映画でも,子役はいつもずるいなあとは思うけれど,学校の生徒たちもそれぞれみんないい味出している.監督が撮影地で発掘したという,主人公ユスフを映画初出演で演じた8歳のボラ・アルタシュは,演じているという感じがなくて好印象.詩を朗読する少女に初恋を感じるシーンや,父親の不在を克服するために嫌いなミルクを飲むシーンなど,表情豊かで見応えもある.
映画全体を通じて,音楽の挿入がなく(家から漏れ聞こえるラジオの音やお祭りの音楽などだけ),少ない台詞と生活音だけ,それと時々ミツバチの羽音の静かな映画.雨がちで白いもやがかかる緑の豊かな森,舗装もされていないぬかるんだ茶色の地面.今と同じ時代なのにどこか懐かしい風景は美しいけれど変化は乏しい.繊細で,つい手をさしのべたくなるほどの子どもの心の動きも,感情任せの大きな起伏とは別次元.平穏な一家から父親の存在が失われるというストーリーなのに,淡々と描かれていく全体構成.それなのに1時間43分はあっという間に過ぎた.正直,もっと見ていたかった,そんな映画だった.

minilogo.png公開は,6月から.銀座テアトルシネマ他全国順次ロードショー(配給:アルシネテラン)だそうです.お楽しみに.
作品オフィシャルサイトはこちらです.


引用文献
Giray, T., M. Kence, D. Oskay, M. A. Doke and A. Kence. 2010. Colony losses survey in Turkey and causes of bee deaths. Apidologie 41(4): 451-453.
Guler,A. and M. Demir. 2005. Beekeeping potential in Turkey. Bee World 86(4): 114-119.
Kandemir, I. Harvesting honey from a log hive. Bees for Development Journal 94: 3-5.




ラベル:トルコ 映画
posted by みつばち at 17:11| Comment(4) | TrackBack(1) | 世界のミツバチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月04日

Honeybee trip in Cambodia - Preah Vihear

カンボジアに来て12日くらい経ちました.
やっとレポートします.

先週は5日間,Preah VihearのPeakという村に
調査に行ってきました.
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ガスもトイレもない
ましてやネットなんかない
普段の私たちの生活とはかけ離れた村です.

この村でのハニーハンティングついてお伝えします.


ヨーロッパや日本の養蜂では,
巣箱があって
巣枠があって
ハイブツールがあって
面布があって
手袋があって
燻煙機があって
いろんな道具を使ってキープするけれど

ハニーハンティングという名だけあって(?)
とても原始的な印象を受けました

道具のほとんどは現地の植物の葉や竹などを使います.
必要な道具は
巣を切り取るナイフ(竹を削って作る)
燻煙のための葉(大量の木の葉と枝を束ねて作る)
ハチミツを入れるコンテナ(竹で取っ手をつける)
はしご(竹を1本切ってきて,その節をステップにして登る)
頭を守るのにはクロマーというストールみたいな布を使います
だいたい大きいナイフ1本で器用になんでも作っていました.

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燻煙材ができてニコリ

いざオオミツバチの巣へ!!
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おぉ!
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準備が整うとさっさとはしごをかけてハンティング開始
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煙をかけると蜂がブァっと飛んで
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私以外のみんなが10m以上離れていきました
去り際めっちゃ早い笑

慌てることなくテキパキとハンティングするハンター
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そしてするすると降りてきた蜂の巣
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今回ハンターは1ヶ所しか刺されなかったようです
オオミツバチは攻撃的なハチだと聞いていたけど
今回見た限りでは,全くもって恐怖感はなかったです.
以前よりは穏やかになったとのことですが
どういうことなのかは不明ですし,
他の場所でもそうなのかは不明です.

しかしおもしろかった!!!


採ったハチミツの使い道については
次のトリップの後にご紹介したいと思います.

簿時あ
posted by みつばち at 21:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 世界のミツバチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月22日

世界のミツバチシリーズ開幕?

ご無沙汰しております.くろさわです.

あくせくしている間に
すっかりミツバチも仕事に本腰を入れていますね.
かわいらしいです.
と同時に,こちらも頑張らねばと思います.
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あくせくって一体なにをしているのか?と言いますと…


本年度より2年間,カンボジアにてオオミツバチの調査を行うことになりました!


とは言え2年間ずっとカンボジアにいる訳ではありませんが,
現地ミツバチであるオオミツバチの調査をして参ります.

この調査は,
カンボジア事業に取り組んでいらっしゃる合同会社ARUN様の
「社会的投資によるBOPビジネスの成長促進の可能性に関する調査研究」
の中の1つなわけです.

要するに,収入が低い人たちの仕事を豊かにするために調査をして
そこに投資しましょう
ってことなのですが(私の単純な理解では)

ここで促進させたいビジネスというのがカンボジアハチミツに関するものです.

しかしながら,カンボジアにおけるハチミツ生産事情というのは
まだまだあまり調べられておらず,未知数です.

何もわからないのでは,いいも悪いも判断できないでしょ
ということで,今回私がミツバチ自体に関連した調査を担当することになりました.
私の学生時代の経験が活かせれば良いのですが…とにかく頑張ってきます!!


生活したことのない土地
接したことのないミツバチ


バタバタみつばちディズをブログでお伝えしていこうと思っております.

カンボジアでの日常はこちらにてご紹介しますので,ぜひご覧になってください!
http://beefriendly.seesaa.net/


世界のミツバチシリーズ カンボジア編の開幕です〜
posted by みつばち at 22:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 世界のミツバチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年09月07日

世界のミツバチ −韓国 済州島のミツバチ−

先日,韓国の済州島に行ってきました.

韓流ドラマがお好きな方はご存じと思いますが,
韓国のハワイと呼ばれ,ドラマのロケ地にも使われる済州島.
日本でいうと
高知・福島県と同緯度の火山島です.
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1日で好きな所をグルリとできてしまうくらい.

ここでの私の仕事は
ミツバチの撮影.

いろんなミツバチに会ってきました.


今回は2ヶ所の養蜂場を見せていただいたのですが,
この2ヶ所は標高が違います.
標高が違うということは気温も植物の開花度も違ってきます.

1ヶ所目は低地の養蜂場.
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ズラリと白い巣箱が並んでいます.
雨でも元気!
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沖縄の蜂もそうですが,雨慣れしているというか…
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ちょっとの止み間で一気に巣箱を飛び出すし,
行けると思えば雨が降っていても出ているし,
ずぶぬれも気にしない.
なんとも逞しいミツバチたちです.

この養蜂場の周辺(低地)には様々な花が咲いていて,
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ツルマメ


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ボタンヅル


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ノアズキ


たくさんの植物での訪花が見られました.

養蜂上の近くというのもあってか,
貪欲に資源を集めるミツバチをたくさん見ることができました.



一方高地の養蜂場は
街を見下ろせるような位置にありました.
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こちらもたくさん飛び回っています.
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どうやら元気な様子です.

しかし周辺探索では
低地よりミツバチが見つからず.
偶然,ミツバチがいないところを
探索してしまったのかもしれないけれど,
低地にくらべて花も少ないような.
気温も少し低いし,低地の蜂よりは活動量は少なめ???



済州島にはたくさんの養蜂家の方がいらっしゃるようで,
今回見せていただいた養蜂場でない場所でも
ミツバチの姿を見ることができました.

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ヘクソカズラ


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ツユクサ


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トウモロコシ


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ヤブガラシ


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ムクゲ


写真を見てお気づきの方がいらっしゃるかもしれませんが,
済州島の植物,日本とほとんど同じです.
亜種かもしれないけれど,ほとんどが同定できちゃいます.



異国のミツバチに触れて
ワクワクの旅でした.

次の「世界」シリーズがいつになるかわかりませんが(笑)
今後もゆっくり
海外のミツバチにも出会っていけたらと思います!
ラベル:韓国
posted by みつばち at 19:56| Comment(5) | TrackBack(0) | 世界のミツバチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月04日

トウヨウミツバチの近代養蜂は「あたりまえ」

中国の海南省(海南島)にプロポリス関係の調査に行ってきました.この島で飼われているミツバチの大半はプロポリスを集めないトウヨウミツバチで,今回お世話になった現地の養蜂企業(海南卓津蜂業)の陳社長によれば,飼育している全22万群(!!)のうち20%だけがローヤルゼリー生産用のセイヨウミツバチで,あとはトウヨウミツバチとか.そこから得られるハチミツは年間50t,これに巣箱におびき寄せた野生の蜂から採るものが20t加わるそうです.数字には誇張も入ってそうだけれど,実際に蜂場を見て,巣箱の中身を見せられると,やっぱりすごいと思います.

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150群以上のトウヨウミツバチが設置されている蜂場.
このサイズの蜂場が全島に分布しているとか.


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蓋をかさ上げして,上桟部に無駄巣を作らせて蜜を貯めさせ,巣蜜として生産.
その後は枠内の上半分の貯蜜も切り取って採蜜します.

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トウヨウミツバチでは,あるいは熱帯ではどうしても水分過多となるハチミツ.
ここでは素焼きの甕(240kg入る)に入れて,2か月ほどで状態のよいハチミツにしています.
この甕が300個ほど瓶詰め工場内の貯蔵庫に置かれていました.

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無王群になった蜂群の手当法を村人に伝授する陳社長(右).

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私たちの調査に同行した陳社長は,道中,デジカメで撮影した画像をノートパソコンで村人に見せながら,海南島の養蜂の可能性を熱く語ってました.
商売ということで熱が入るのはともかく,こうしたデジタル機器の効果的な使い方ができている点には舌を巻きました.


もちろん,トウヨウミツバチはタイでもネパールでも,30年以上前から近代的な,可動巣枠式の巣箱で飼われてきました.インドや中国ではそれなりの技術論も出版されているし,その技術をダウングレードしながら、つまり伝統養蜂との中間技術の開発をしながら,各国の村落開発での養蜂振興は進められてきています.日本では,最近,ニホンミツバチの飼育技術論がにぎやかなようです.その点どうなのか,辛口ミツバチと検証してみましょう.


minilogo.png日本はもともとはニホンミツバチさんだけで養蜂をしていたんだよね.で,明治10年にセイヨウミツバチが来たときに近代養蜂技術も一緒に伝わったのでは?
もちろん.技術が普及したのは,明治22年に,農学者としてアメリカで学んだ玉利喜造さんが近代養蜂を持ち帰って『養蜂改良説』という本を出してから.これがニホンミツバチの養蜂を近代化しようとした第一歩だっただろう.ただ,結果はうまくなかったので,それ以降,養蜂はセイヨウミツバチ一辺倒になっていった.

minilogo.png近代養蜂方式でのニホンミツバチの飼育はその後は行われなかったの?
まったくなかったとは思えないけれど,確立はしていなかった感じだな.玉川大学でニホンミツバチの研究を始めた頃は,ニホンミツバチの飼育自体が貴重だった.専用道具もなく,セイヨウミツバチの箱と巣枠を使ってたけど,よく逃げられていたっていう印象だなあ.ニホンミツバチの飼育や技術論が盛んになったのはこの20年くらいのことじゃないかな.それぞれ独自の完成形を導いて,技術的な交流がなく,全体的な技術向上に必ずしもつながっていないのが残念といえば残念なところかな.

minilogo.png日本以外ではニホンミツバチさんのお仲間のトウヨウミツバチは飼われていたんだよねえ.
インドや東南アジア,中国など,どこでも産業としての規模で飼われていた.伝統養蜂が中心の地域もあるけれど,その中でも部分的な近代化は入ってきていた.自分の目で技術体系を確認したのは20年前のタイ.実験用のトウヨウミツバチを分割して立ち上げたり,車で長距離運んだり,観察巣箱に入れて長期間飼ったり,実験スケールとはいえローヤルゼリーも採集できていた.どれも,巣枠で飼われていたから,そういうことが可能だった.どんなこともほぼごく当たり前に行われていて,最近問い合わせの多いニホンミツバチの趣味飼育者からの技術的な質問は,例えばこうした地域でトウヨウミツバチを飼っている養蜂家ならすぐに答えられそうな感じがする.

minilogo.pngニホンミツバチ(トウヨウミツバチも)さんを近代的な方法で飼うと何かいいことがあるの?
いろいろなメリットがあると思う.養蜂産業の中で用いる産業動物をセイヨウミツバチから地場のミツバチに置き換えるというのが,たぶん各地の究極の目標だろう.すると,ミツバチ自体の育種も必要で,そのためにも,飼育技術の近代化は不可欠視され,セイヨウミツバチで確立している養蜂技術を地場のミツバチに移転できるように工夫が払われていた.人工分蜂とか,合同とかね.枠を利用すると,採蜜時の巣の損失を低減できるから,繰り返し採蜜による生産性向上もひとつの目標だっただろうし.

minilogo.png最近,ニホンミツバチを飼おうという話が多いけれど,それにはどんな意味があるの? 近代的な技術でなければダメなの?
価格的に高価なハチミツを採ることが主眼という意味では,近代的である意味合いは小さいかもね.野生のものを利用する場合,動物自体のコストは小さいから,もともと収益性は高い.したがって,伝統的な巣箱でよければその方がよいといういい方もできる.産業動物としてセイヨウミツバチを置き換えるまでにはまだ長い道のりがあると思うけれど,その場合は,やはりセイヨウミツバチで行われているような近代的な飼育方法の導入や,それに耐えるミツバチの品種改良も不可欠だろうし,いろいろ飼って,適性のあるミツバチを見いだすことには意味が出てくるだろう.あと,少し位置づけが違うけれど,ニホンミツバチを環境指標として考えての飼育もあるようだね.

minilogo.pngでも,ミツバチは環境指標性がないとこのブログでも書いたばかりだよ?
ニホンミツバチは基本的には野生の生き物だから,ある空間にどの程度の生息密度があるか,その推移を含めて調べれば,それなりに意味のあるデータは得られる.環境がどの程度のミツバチを扶養可能かということは,相対的な資源量を示すことにはなる.

minilogo.pngでもそれはニホンミツバチさんにとっての資源量を評価しただけで,全体的な生物多様度まではわからない.ミツバチだけでやっていけているわけではないんだし.
そりゃそうだ.ただ,ミツバチが多様な植物を利用するという前提ではまったく意味がないわけではないだろう.一方の,動物の多様性という観点では,あくまでも推定するに過ぎないし,資源をめぐっての競争の勝者(不戦勝のことも多い)を見ているだけだったら,ニホンミツバチがいるから生物多様性が高いとかそういう言い方はできない.その点では,環境の全的な指標にはなり得ないね.

minilogo.png野生のものにはある程度指標性があるとしても,飼っているミツバチでは環境を指標することはできないんだよね?
どうだろう,今回見てきた海南島の養蜂現場では,100〜150群ものトウヨウミツバチが一つの蜂場に置かれていて,ちゃんと養蜂業としての生産活動ができていた.一か所に10群程度飼育できることと,100群飼育できることには,量を超えた質的な差異があると思えるけどね.それが,周囲の環境がどの程度ミツバチを養っていけるか,資源環境としての扶養力の評価にはつながっているんじゃないかな.

minilogo.png海南島にはそれだけのミツバチを養う資源があるということになるのかな?
熱帯から亜熱帯の気候で,セイヨウミツバチには厳しい環境だろうけれど,それでも採蜜もローヤルゼリーの生産もできている.そのことは,ひとつの事実として環境を評価する尺度として利用できるだろう.ただ,ニホンミツバチに関してはその点の評価はまだ難しいかも知れない.トウヨウミツバチとニホンミツバチもちがうだろうから,海南島の事例を日本の実情に当てはめるのも難しいだろう.その点で,飼える,飼えないというところではなく,繁殖成功率や,産業性指標を導入しないと,本当のところはわからないかも知れない.

minilogo.pngミツバチとしてもそこは危惧するところだよ.「飼える」というのが,人間の行為についての言及にとどまっていて,その成功性だけが優先して評価されるから,生きているミツバチの側の質,これも一種のQOLだと思うけれど,その部分は評価されないままになっている.この点は飼う立場の人たちに理解してもらいたいなあ.そもそも自分がミツバチを飼っている場所がどんな資源環境なのか理解できてないってことは,やっぱりミツバチの気持ちがわかってもらえてないってことだから...,そんなところでは飼われたくないんだ.
確かに,飼う前に知ることというのがたくさんあると思う.どんなに優れた技術や改良された巣箱でも,その場の環境が悪ければ,それを適正に評価することは難しくなる.どちらが先にあるべきかは火を見るよりも明らかなのに,そうした議論がないこと自体は,人間側の考え方にミツバチの視点は含まれていないことを示してしまう.ミツバチを扶養できる資源環境は,人間も利用している空間にあるという意識を持っていてこその技術論だろうね.飼えた,ハチミツが採れた,そんなところで議論を打ち切らないで,もっと大局を見るようにはして欲しいね.

posted by みつばち at 12:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 世界のミツバチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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