2016年08月16日

「大量死 ミツバチから農薬」の記事についての考察

「大量死 ミツバチから農薬」といった見出しの記事が、時折、メディアで報道され、そのたびにシェアされ、拡散されていきます。
たとえば、こんな記事も。
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ネオニコチノイドなどの農薬は殺虫剤です。
かけられたら、昆虫は殺虫されるのは当然のこと。
では、それを避けるためにどうしたらよいのか…それを考えることが必要なのですが…
どうしても「農薬反対」で「使わなければよい」という結論になりがちです。
そして、もう何十年もそんなやりとりがなされ、同じような記事が掲載され続けています。

ミツバチの置かれている本当の現状とは?
その解決策とは?

「農水省は2013〜15年度に全国の養蜂家から都道府県を通じて連絡があったハチの大量死198件の原因を初めて詳しく調べた」という結果について

農水が確認した内容は、死んだミツバチから検出された薬剤の種類であって、どのような状況でそのようなことが起きたかについてはまだ推測の域を出ていません。ただ、該当の農薬(決してネオニコチノイドだけではありません)が使われる場面は、法的に、あるいは農業の実践上、ある程度特定されます。農水は半数以上が北海道の水田地帯としています(もちろんそれによって残りを無視した表現になっていて気に入っていません)。水田はミツバチにとって決して理想的な資源ではなく、そこで農薬を浴びているとすれば、その不幸な事故の原因は薬剤の種類ではないことになるでしょう。
現在、世論はネオニコチノイド有害説に傾いていますし、政府にもそうした意味での圧力がかかっています(政治家は農薬の専門家ではないですし、有権者の感情論であっても無視できないですから)

状況を分析すると、端的には以下の2点に絞り込むことができます。

1)ミツバチから検出された薬剤はネオニコチノイドだけではないこと(あるいは7種あるネオニコのすべてが見つかっているわけではないこと)=使用される多様な種類の農薬にミツバチが曝露する状況にあること

2)北海道はミツバチの密度がその時期に高く、資源が不足傾向にあり、畦畔の雑草、特にミツバチが好むクローバー類がよく利用されるため、水田に散布した際にこれらの雑草も同時に汚染され、ミツバチが薬剤に曝露しやすい状況になっていること

つまり、本来農薬に汚染された資源をミツバチが利用さえしなければ起きない問題が起きているということになります。

解決するために必要なこととは?

この解決のためには、ミツバチが行くべき資源を別途用意すること、畦畔除草を推進する(ただしこの場合は除草剤が利用されることにもなります)、薬剤の使用を控えるといった方向性があります。この中で薬剤の使用を抑えるのが、多数が合意形成できそうなものですが、米農家は抵抗を示すでしょう。カメムシ被害で等級が低下して米価が下がること、色選機(カメムシの吸汁跡が黒点となった斑点米を選別する機械)の処理を待っていると出荷が遅れるなどの問題で、農家の経営には打撃が大きくなります。米の等級を廃して、斑点米入りの米飯を我々がよいものと同級品として食べる(皿盛り米飯ではけっこう目立ちます)とか、消費側の意識も必要かも知れませんが、害虫被害は適正な防除をしないと拡大・深刻化する可能性もあり、作る側にとっては不安要素として残ってしまいます。

農薬のユーザーは誰?

農薬とミツバチの関係は、状況が生んでいる事故であり、特定のモノとしての原因があるとは思えません。例えば、見通しの悪い道路で歩行者が車にはねられる事故が多発していた場合でも、車(亡くなった方を調べれば,直接の死亡要因が車であることはわかるでしょう)を全面的にダメで規制しろという人は極少ないでしょう。
代わりに歩車分離を徹底する(そのために歩道やガードレールをを設けて人が車道に入らないようにする)とか、注意喚起の表示を歩行者にも車にも向けて設置するとかいうあたりが一般的な解決案ではないでしょうか。なぜ農薬の場合はちがうのでしょうか。おそらく一般の方にとって自分が農薬のユーザーであるという認識がないからでしょう。

農業そのものが他の昆虫を押しのけて人間のテリトリーを増やす活動であり、結果として、天敵類を減らして、害虫への農薬使用を促しています。また、農業や林業、道路などのインフラ、あるいは居住区の拡張などの人間の活動が、ミツバチなどが利用できる資源を断片化させ、農薬を利用する農地周辺のわずかな資源を利用させることにつながっていきます。
だから、有機農業を推進すればよいという意見も多々聞かれますが、有機農産物の出荷量はH21年で総生産のわずか0.2%です。農薬を使用する99.8%を有機農業に転換するのには、需要と供給のバランスが成り立つのか、コストは見合うのかなど課題は多く、もし、仮に可能だとしても途方もない時間がかかるでしょう。つまり、有機食品の販売やそれでの調理品を提供する側の立場では、自分たちやお客さんは農薬のユーザーではないと考えることは可能ですが、多くの人は否応でも農薬のユーザーです。その意識からは、農薬の禁止ではなく、農薬とミツバチの分離をまずは考えるところからでもと思います。

予防的な使用禁止による成果は?

予防的な農薬使用禁止措置が、ミツバチを保護したり生態系を回復させたと証明するには時間も必要です。EUも、2か年の禁止期間では明確な変化が見えず、効果評価のために1年間使用禁止期間を延長しました。ただ、一方で、農作物を作る立場からは、害虫発生による減収があったり、それを防ぐために他の薬剤(ネオニコチノイド系農薬以前に使用されていた有機リン剤や合成ピレスロイド系農薬)の散布が増えるという実態があり、結局それを回避するためにネオニコチノイド系農薬の使用を暫定的に認めた(禁止撤回)地域もあります。
農薬禁止の効果は実験的に評価できるはずですが、結果は多様(禁止効果が高いというものから、禁止効果はないというものまで)になることが予想されます。禁止自体が、科学的根拠に基づいたものではなく政治的に始まったものであり、今後の撤回にしても延長にしても、判断は科学的根拠よりは地域や各国の諸事情に鑑みた政治的判断に基づいたものになるでしょう。

農薬の環境への影響は?

生態系への影響もミツバチへの影響も殺虫剤ですから、当然あることでしょう。農地とその周辺の環境を人がどこまでコントロールできるのか。人以外の生物は勝手に入って影響を受ける、それをどう考えるかでしょう。
農地には、我々の食糧を常に確保し続けなければならないという至上命題があります。
自然環境と生き物への影響と、その命題をどうマッチさせていくかは、人類の永遠の課題だと言えます。
ミツバチと農薬の接点をできるだけ減らすためには、ミツバチにとっての資源を農地とは別のところに確保するということも、課題解決の一つの方法だと考え、みつばち百花は、蜜源・花粉源植物の検証や増殖に取り組んでいます。

posted by みつばち at 17:59| Comment(0) | TrackBack(0) | みつばちを取り囲む現状 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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