2013年05月01日

続 都市とミツバチ 〜わずかでも花があれば

ミツバチを飼う人が増えたからでしょうか,東京都内でミツバチを見つけることも難しいことではなくなりました.先日,都市養蜂についての取材を受けたのを機に,都市部でどんな植物がミツバチに利用されているのか,少し調べ始めました.するとちょっと驚くべきことに気がつきます.いつものように辛口ミツバチといっしょに進めていきましょう.

昨日,都心の小さな花壇に,数株のヘアリーベッチが植えてあるのを見たら,1匹だけミツバチが来ていたよ.花壇の面積は1平方メートルくらい.どうやってこんな小さなのを,見通しも利かないビル街で見つけるのかなと不思議に思った.君たちの行動半径は,経済半径として2キロメートルくらい.ということは蜜や花粉を集めている面積は1000万平方メートルを超える.その中の1平方メートルを発見するなんて,その1.5cmしかない体からすれば,単に1000万分の一というよりも小さな確率のように思うけど.
minilogo.pngまあ,そのあたり(渋谷界隈)なら,飼われているミツバチの数は50万匹を超えてると思うよ.そのうち10万匹くらいが外で働いているとすれば,ある1平方メートルを探すのは百分の一くらいになるんじゃない?
ヘアリーベッチ.jpg


ま,確率的にはそうかも知れないけれど,そこにたどり着いたときに花が終わっていたら何にもならない.10日間だけ咲く花だとすれば,その間に見つけなければならないんだぜ.
minilogo.pngそんなの驚くべきことじゃないよ.ミツバチはイヌさん並みには鼻が利くんだよ.人間にはわかりにくいだろうけど,ミツバチはもともと花の匂いには感度が高いんだ.一度花を訪れちゃえば,繰り返しそこに行くのはどうってことない.ミツバチは1回見たり,嗅いだりしたことはすぐに覚えちゃうからね.

ミツバチが花の場所を教えるダンスは,思ったよりも利用されていないという論文も出ているけれど,こういう場面,つまり,本当にピンポイントな花の位置情報を伝える上では大いに役に立つだろうね.
minilogo.png残念だけど,そのくらいの資源サイズじゃ,誰か1匹が通えば充分な仕事.ダンスで仲間を呼ぶ必要はないかもね.もちろん同じ種類の花は,同じ時期に咲いているはずだから,その周辺で同じ花を見つけてもらうためにはダンスも役には立つんだけどね.どちらかというと,動員するよりは,それぞれが探索に出た方が花に行き当たるし,小さな資源を確実に確保できることになるんだよ,たぶんね.都市の環境は,私たちの遺伝子には対処法が書かれてないから,自分たちでも検証できていないんだよ.

巣の近くなら,全員で探索しても,確かに探索コストは抑えられるかも知れないね.でも近いと,同じ場所で飼われているミツバチ同士で花の取り合いになるだろう?
minilogo.png取り合いというよりは早い者勝ち.だから,働き手の多い大きな群れほど有利になる.ただ,花がなくなると大きな群れほど餌不足になることもあるからねえ,何ごともほどほどが一番なんだよ.セイヨウミツバチの場合はさ,人間が巣箱の場所を決めるんだから,1か所に置く数は少し加減して欲しい.大きなお花畑や蜜源の森があるような環境じゃないんでね.

前回の繰り返しになるけれど,たくさんハチミツが採れるから,都会も資源が豊富だと思っている人が多いよ.
minilogo.pngえっと,今日本にいるセイヨウミツバチは,ほとんどがイタリアン系統の雑種で,ハチミツの生産性が高いといわれるけど,要は燃費が悪くて,たくさん巣に蜜を貯めてないとやっていけないミツバチってこと.資源がパッチ状に分布している都会では,ダンスを利用した集中訪花はできないから,どうしても蜜集めのコストが大きくなりがち.でも,巣に蜜を貯めなきゃやっていけないミツバチだから,毎日,頑張って集めてる.悪いことだけじゃなくて,都市環境だと,私たちを捕まえて食べちゃうような天敵は少ないし,花を見つける競争相手のハナバチさんたちも少ないんだよ.とはいえ,無視してもいいような花資源を丹念に拾い集めることでしか,充分な蜜を貯えることはできないね.だから,それを豊かっていわれてもなあ.

状況的には不足があっても,巣にたくさんの蜜を貯えられるなら,それでいいじゃないか,結果オーライで,だからこそ豊かだろうって理屈もありそう.
minilogo.pngあのさあ,例えば人間も体温を維持しているでしょう.それが人間の場合は健康な証拠だよね.でもじゃあ,体温維持できていればいつでも「いい状況」なのかな.体は汗をかいたり,脂肪を燃やしたりしてるし,そのために,水を飲んだり,ご飯を食べたりする.そのどれもが問題なくできる状況なら本当はいい状況かもね.でも,人間はさ,自分の体のやっていることに感謝してないから,本当は体温維持はできているのに,すぐに暑いだの寒いだの文句たれてるよ.ミツバチの状況も同じように考えてくれれば,決してよくなさそうじゃない?
ミツバチはさ,どんなにちっぽけでも花があること自体にはいつも感謝しているし,その資源を有効に利用させてもらってるよ.巣に必要な蜜を貯えられる状況は何にしてもありがたいこと.でも,それが「いい状況」かどうかはわからないな.人間がいうほど豊かじゃないとは思うけど,自分たちが努力すれば何とかできることなんだ.それに,上を見たらきりがないし.そもそも資源環境なんて移ろいやすいものって想定だから,その豊かさなんて前提にしないで,変化に適応できるかどうかの方を問題にしているんだよ.


資源が豊かであってもそうでなくても,ミツバチとしては巣には蜜を貯える.実際に資源豊かで,ミツバチにかかる負担が小さくてたくさんハチミツが採れる場所に較べたら,都会では,採れたハチミツのミツバチの努力分が大きくなるってことだろうね.飼う人からすれば,ミツバチへの感謝も普段以上に追加しないといけないね.
minilogo.pngハチミツを巣に貯えること自体はミツバチの本能だから,別に感謝されたいわけじゃないんだけど,どこでも同じように働いているとか,同じように楽しているっていうわけではないことは理解して欲しい.都会は人間が暮らすスペースで溢れているから,ミツバチや花のためのスペースは限られている.どんな花壇でも,ミツバチより人間の方がたくさんいるもの.でも田舎のお花畑に行ったら,人間よりもミツバチの方がたくさんいる.それが当たり前でしょう.ミツバチにとって,都会は田舎の代わりにはならないよ.人間は代わりになると思っているのかなあ.人間ってさ,いつも常識がずれてるよねえ,よくそれでやっていけるよねえ,不思議.

最後は人間の方を不思議がられちゃいました.
さて,全国各地から,採蜜のニュースが伝わってくるこの頃です.地方では,養蜂家が場所を選定したり,蜂群を採蜜に向けて仕立てたり,はたまた蜜源植物を植えたりしながら,知恵と腕にものをいわせて,それぞれの地域に固有の,蜜源を配した景観が想像できるような,さまざまな特徴のあるハチミツを生産しています.そこではミツバチは,養蜂家の同僚として,準備万端整えてくれた養蜂家の努力に見合う働きをします.
都会のミツバチは,飼う人よりもはるかに大きな努力を強いられていそうです.ミツバチにとって,巣に蜜が貯まっているのは普通のことで,常にその状態を維持するために,花を訪れては蜜を集めます.ただ,どう考えても,都会にはミツバチのためのまとまった資源があるとは思えません.そのためミツバチは,丹念に小規模な蜜源を利用しています.
もともと都会で働く人々の心を癒すための花壇ですが,今度は,ぜひ咲いている花にミツバチが来ていないか注目してみて下さい.ミツバチの頑張っている姿に元気をもらえるかも知れませんよ.

posted by みつばち at 11:41| Comment(0) | TrackBack(0) | ミツバチの気持ち by Junbee | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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