2013年04月24日

都市とミツバチ

都市養蜂を特集するということで,その先進国,日本での取材のため,韓国の子ども向け科学雑誌の記者の方が来日中です.昨日はとある都内のプロジェクトを取材されたそうです.私は,都市養蜂の意味には懐疑的だからと一度は断ったのですが,かえって面白そうと思われたのか,本日取材となりました.
なかなかいい雰囲気で取材が進みましたが,終了後,記者の方を蜂場に連れて行ったら,思いっきりミツバチに体当たりされてました(大学のミツバチは口は悪いけど,普段はとってもおとなしいんです).どうやら辛口ミツバチも伝えたいことがあったようですよ.


「ミツバチは環境指標生物ですか」って聞かれたけど,そもそも環境評価に使う生物(つまり環境指標生物)は,あるがままの状態で環境の中に置かれているという前提があるだろう.もちろんちがうとお答えしたけど,ミツバチ的にはどう? ちゃんと環境の影響受けている?
minilogo.pngだってさ,好きなときに好きな場所に人間が移動させることができて,足らなきゃ餌ももらえる.もし資源環境を評価するなら,餌をもらった時点で私たちは環境影響から切り離されちゃうよ.それとも,ハチミツ採った分だけ砂糖水返しているから,その分はプラスマイナスゼロってことなのかな.

いや,まあ,普通はそうは考えないだろう.飼われた時点で環境指標生物にはなれないよ.ただ,ミツバチが作るハチミツが環境指標になるという研究は多い.大気中の汚染物質を取り込みやすいので,チェルノブイリの原発事故以降,ハチミツ中の放射能レベルで汚染状況を評価したり,他の大気汚染物質のモニタリングにハチミツを使っていたりはする.
minilogo.png大都会だってミツバチがやっていけている前提では,きっと人間に対しての大きなリスクはないんじゃない? 放射能はミツバチの方が耐性が高いんだっけ? だとしたら,ミツバチがやっていけているからって安心はできないのかな? でも,そんなの調べればいいことでしょう.そういうの人間は好きなんだから調べたらいいんじゃないの.環境指標生物にはなれないけど,環境評価のエージェントととしてはミツバチは優秀だよ.それに自分たちが飛び回っている都市の環境がいいのか悪いのかも知りたいしね.手伝うから,ぜひ調べてよ.

もう一つ,「ミツバチは都市の自然環境の維持に役立っていますか」と質問された.そもそも自然環境っていうのは言葉のあやだろうけどね.で,都市養蜂では,ミツバチの受粉活動が大きく評価されて,都市の生態系維持に寄与しているってことなんだろうけど,実際のところどうかなあ?
minilogo.png何でよ,花があれば,何でもってわけにはいかないけど,けっこう受粉には貢献しているし,実がなったり種子ができたりしているんじゃないの.代わりにお花は蜜や花粉はいただいているけど.生態系の維持には貢献できていると思うな.

ミツバチが働いてないという意味ではないよ.野山だったら,できた実はやがて地面に落ちたり,鳥や動物に食べられて,種子が散布される.でも都市でどこに種子が散布される地面があるだろう.そもそも,植物の世代交代はかなりの部分人為的に起こるものだし.受粉による生態系の維持の実態は限りなく小さいんじゃないかな.
minilogo.pngそれはミツバチの知ったことじゃないよ.ミツバチはさ,植物は地面から生えていて花を咲かせて,そこで私たちが手伝ってできた種子は,どこかの地面に落ちて,また芽を出して,という想定だもん.その地面がないことは人間が作った状況で,私たちには想定外の状況だよ.

その意味で,都市の生態系を維持する上でミツバチが役立っているというのは錯覚だよね.
minilogo.png素直に受け取りにくい言い方だなあ.でも,ミツバチが悪いわけではないんじゃない.都市の生態系なんて,ミツバチの想定外だっていってるの.生態系に人工的な意味での種類があるのは,まったく想定外だよ.そんなの知〜らない.

そして,たくさんのハチミツが採れることを,都市環境の「豊かさ」だといいたがる人がいる.ミツバチとしてはけっこう頑張って集めてくるんだろうね.
minilogo.pngあのさあ,人間は自分のこととしてなら考えられるかな.毎日一生懸命働いて少しずつ貯えていく人と,稼げるときに稼いで貯める人といるでしょう.セイヨウミツバチはね,どっちかっていうと,稼げるときに頑張って,あとは適当に済ますタイプなんだ.ニホンミツバチさんは,地道に働くタイプだよ.ま,ニホンミツバチさんのことはともかく,セイヨウミツバチは,周囲の花資源が豊かどうかとは関係なく,できるだけ蜜を貯め込みたいの,冬を越すの下手だからね.だけど,本当は,私たちも必要以上には貯めないんだよ.人間が繰り返し採っちゃうから,仕方なくまた集め直しているだけ,採蜜が続くと,いつも「頑張って集める」モードでいなきゃならないから,本当は辛んだよ.だけど冬を越せなくなるのだけは避けなきゃいけないから,花がある限りは何とかしようと思ってる.それってけっこう厳しい状況なんだよ.「元気に喜んで働いている」とか書かれると,さすがにちょっとムカッときちゃう.喜んで働いて欲しいなら,いい蜜源を用意して.水っぽい花蜜はハチミツまでの道のりが遠くてさ,時間もエネルギーもかかっちゃう.ハチミツに近いいい花蜜を出す花をたくさん植えといてね.そしたら頑張ってあげるから.

そんな評価,これまで誰もしたことないし,どの花がいい花かなんてわからないよ.基本は花なら何でもいいと思われているみたいだよ.
minilogo.png花がなきゃならないのは確かだけど,何でもいいわけじゃない.豊かっていうのは選択肢があるっていうこと.おいしいものや栄養の偏りがないように食べ物を選ぶのは人間もやってるよ.でも,厳しい状況なら,選ぶってことはできなくなって,あるもので何とかしなきゃいけなくなる.花蜜の場合は,貯めなきゃいけないときにはできるだけ濃いものを選んで集めるんだよ.でも,選びようがなければ薄い蜜だって仕方ない.でもそこからハチミツを作るのは,濃い花蜜から作るよりは効率が悪い.だから花なら何でも同じではないよ.蜜源植えてくれるっていうんなら,そのくらいは考えて欲しいなあ.

この時期,ミツバチたちの羽音は,とても元気そうで,喜びに溢れている感じが伝わってきます.それは大量の蓄えを作るのにちょうどよい花があるからでしょう.そういうよい花が咲き続けている時期であれば,採蜜をしても,頑張って貯め直してくれます.でもその季節が過ぎてから採蜜をしたら,どうなるでしょう.冬のために貯め直している光景を見て,ミツバチが喜んでいる状況なのかどうか,飼う立場でわからないとしたら,お互いに不幸でしょう.本来のサイクルや,想定された環境とは異なることが生き物にどう負荷をかけることになるか,想像力を働かせてみましょう.それがミツバチへの思いやりでもあるんです.

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posted by みつばち at 19:58| Comment(0) | TrackBack(0) | ミツバチの気持ち by Junbee | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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