2012年07月25日

女王蜂の翅,切る? 切らない?

昨日,忙しくて欠席した会議の合間の雑談で,ミツバチを飼う際に,分蜂(巣分かれ)を防止するために女王蜂の翅を切るべきかどうかという議論があったそうで,意見を求められました.女王蜂の翅を切ることは,剪翅(せんし)といって,養蜂上の技術の一つとして位置づけられます.翅を切っておくことで,分蜂しても女王蜂がついていけず,働き蜂が巣の近くに集結したままになるので,これを回収することで,ミツバチの損失を防げるという意味で有用な技術です.ただ,有機養蜂の規格では,基本的にこれを禁止していますし,もともとミツバチが身近な生き物で,また最近は特に動物福祉が実践的にも定着しつつあるヨーロッパでは「なぜ切らなければならないの?」といわれそう.ということで,切るべきか切らざるべきか,辛口ミツバチと一緒に考えてみようと思います.

何だかもうすでに,顔見ただけでいいたいことが伝わっているから,剪翅技術について,その利点はこれ以上述べる必要はなさそうだね.本論に入ろうか,意見をどうぞ.
minilogo.pngいいんだよ,気を使わなくても.だって「技術」だから「いいこと」なんでしょ.畜産学的に有用技術なんじゃないの.「剪翅」だって,カッコいい言葉だね.ま,翅を切るのも髪を切るのと同じだと思っているよね.ミツバチは翅切られたくらいじゃ痛くもないし,まして死にゃしないし.殺さないですむなら,人間は動物のあちこちを切って飼うのが好きだしね.ブタさんが太りやすいように去勢するとか,ニワトリさんのくちばし切って,エサをこぼしにくくするとか,何でも好き放題,勝手にやってよ.

まあまあ,いきなり喧嘩腰はやめようよ.住宅密集地や,都市部のような町の中でミツバチを飼っていたりすると,春に起きる分蜂の,特に群飛(画像参照)の部分は,一般人にはやはり恐怖以外の何ものでもない.分蜂のミツバチがおとなしいといわれても,数万のミツバチが空を暗くして飛ぶのは,普通の精神状態では見てられないから.ともかくそれを防ぐためには切った方がいいという意見になるのだろう.
群飛するセイヨウミツバチ

minilogo.pngふ〜ん,本来の技術とはちがう目的なんだね.でもさ,分蜂は,ミツバチにとっては一生一度の重大イベントだよ.花に行くのとちがって,新しい巣を建設するために,みんなで気持ちを一つにして移動するんだ.あの群飛がなければ,(夏や秋に生まれてくる働き蜂には悪いけど)ミツバチらしい一生を送ったとはいえないよ.人間が見ても,迫力のシーンでしょ.一生に一度でいいから見たらいいと思うよ.金環蝕並みに感動すること請け合うよ.人口密集地でこそ,ば〜んと群飛させて,もう一生ものの感動を,できるだけたくさんの人で分かち合えばいいじゃない? そのチャンスを無にしちゃうよ,翅切ると.

まあ,確かに金環蝕は日本中で感動共有したけどね.相手がお天道様ではなく,誰かの飼っているミツバチだったりすると,飼う人が他人に迷惑をかけたことになって,それ以降,飼うことが困難になるだろう.ちょっと風変わりだけど,かわいいペットとしてミツバチを飼う人にとって,それを手放すのは耐えがたいことだし,やはり防ぐ手立てとして何か必要ということだろう.
minilogo.pngだから翅くらい切ってもいいと思うんだろうね.住宅地だと,吠え声がうるさいっていわれちゃうから,声帯切除してイヌさんを飼うのと同じセンスだね.自分が「飼う」っていう行為を実現するために,かつ他人から文句を言われない自分を実現するために,肝心の飼われる生き物は,体の一部をなくして,まともじゃなくなっても,飼われてさえくれていればいいっていってるわけだよね.それってまともな精神構造なの? それに,他人から迷惑がられると思うよな場所でどうしてミツバチを飼いたくなるの? その精神構造もまともじゃないよ.

犬の声帯切除と同等とまでは思わないけどね.確かに,そうまでして,町の中での飼育にこだわる理由はないよね.実際,ミツバチと一緒にいたいからと,地方に引っ越していく人たちもいるしねえ.
minilogo.pngミツバチは自分で翅を切ったりしないけど,アリさんなら,女王蟻さんが自分で翅を落とすからさ,アリさんを飼えばいいと思うよ.どう? おっきなガラスケースに土を入れて,巣が地面の中にできていく様子とか見たら,毎日楽しいよ.ミツバチは飛んでっちゃうけど,アリさんは歩いているから後を追いかけて,どこで食べ物見つけてくるかとか観察もしやすいし.おまけに刺さないし.ミツバチじゃなくてアリさんにしなよ.

そうだね.それはそれで楽しそうだけど.たぶん,今ミツバチを飼っている人たちが,翅を切らなくてもいいからって理由で,アリに乗り換えたりはしないだろうなあ.
minilogo.pngそれはさ,結局さ,かわいいとかいいながら,ミツバチが集めるハチミツが欲しいだけなんでしょ? ごうつくばりの人間どもめ!

まあ,確かに,結局はそこだとは思うね.刺す昆虫なのにあえて飼おうというのは,ハチミツが自分のものになるという部分が大きい.もしそれがなかったら,つまりかわいいだけでは,ここまでミツバチブームにはなってないだろうからね.
minilogo.pngかわいさだけでは不足って,悪かったわね.でも,ハチミツなんていくらでもくれてやるから,普通にハチミツを集められる場所で飼ってくれないかな.ミツバチは,いっぱいいる天敵に捕まったりすることがわかっていても,広い空の下で,たくさんの花に向かって飛びたいんだよ.だれが先に蜜を見つけるか競争したいんだよ.人間がいることはかまわないけど,本当は人間が作った空間じゃないところ,自分たちのDNAが知っている空の下で生きたいんだよ.
あのサンテグジュペリの「人間の土地」に出てくるカモシカさんみたいにさ,例え人間に飼われて,手から餌を食べるまでに慣れても,やっぱりライオンさんに食われちゃうかも知れない大地を走りたいんだよ.それが生き物の本然でしょ,そういうこと考えたことある?
人間はさ,人間との関係でしかものごとを考えないよ.うるさい(といわれる)から声帯を切除する.分蜂(して他人を恐怖に陥れたり)するから剪翅する,逃げたら(誰かの迷惑になっっちゃうし)自分もいやだから閉じ込める.生き物の都合はこれっぽっちも考えない.まあ,人間同士でも他人の都合を考えない人が多いみたいだから,それが人間て生き物の「普通」なんだと諦めるしかないのか.


実態はともかく,それが「普通」ではないとは信じたいけどね.
切った方がいいという意見は,町中であれ何であれ,ひとたび事故が起きれば,周囲の人間の視線がすべてのミツバチに同じように注がれちゃう.少数の不心得者のせいで,ミツバチとそれにかかわる人すべてが迷惑を受けないように,予防措置的なこととして剪翅すべきという意見になっている.でも,ここはやはりもう一歩踏み込んで,剪翅をしなければ他人に迷惑がかかるようなところで,なぜミツバチを飼わなければならないのか,そこを考えるべきだろうね.
実は,有機養蜂で剪翅を禁じているのは,動物福祉的な意味合いが強い.ただ,誤解されやすいが,ミツバチは剪翅で苦痛を感じはしないので,痛そうだとか,かわいそうだからという意味での剪翅禁止ではない.剪翅の禁止は,本来は,ミツバチが自由に分蜂できるような空間にいること,それは同時にミツバチが蜜を集めてくるのに本質的に適した環境であり,だからこそ生産環境として,有機的でよいと評価できるということでもあるんだ.

minilogo.pngそんな場所だったら,わざわざ翅なんて切らなくったって,だれも文句言わないだろうしね.人間はハチミツは美味しいとかいいながら,ホンモノのミツバチを見ると,怖いとか気持ち悪いとかいう.働き蜂は女の子なんだから,本当に失礼しちゃう.でも,群飛しているの見て,「ああ,分蜂だ,また春が来たねえ〜」とかいってもらえたら,ミツバチ的には嬉しいな.同じ空間と季節を,人間とミツバチが共有できてるってことだもの.ミツバチが一生一度の大イベントをやっているときに,一生に一度しか見られないこと見ちゃったと,仕事の手を休めて,群飛の行方を追ってもらう.家に帰って,興奮したまま,家族に今日の感動を伝えるのって,何かいい絵になりそうだよね.ミツバチは人間とそういう関係を作りたいな.

今日は珍しくポジティブな方向に落ち着きそうなので,ここまでにしておきましょう.
なお,剪翅の是非論は,たぶん,本質的な議論にはなりません.でも可能であれば,自由に分蜂ができる環境をミツバチに提供したいし,分蜂を見て,季節を感じてくれる人々が増えることも,同時に願ってやみません.ミツバチと空間や時間を共有できる人が増えるだけでも,ミツバチ的には大きな「環境」の改善になるでしょう.





posted by みつばち at 13:02| Comment(2) | TrackBack(0) | ミツバチの気持ち by Junbee | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「ああ,分蜂だ,また春が来たねえ〜」と、本当にそういうふうになるといいですね。
Posted by Mitta Mitta at 2012年07月27日 21:42
みつばち百花のメンバーなら、分蜂に遭遇できたら、ラッキーっ!と大喜びですよね。
Posted by Lazybee at 2012年07月27日 22:14
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