講演会の存在自体は,はちっこくらぶ代表の西村靖子さんから,みつばち百花のNLを講演会で配布できないかという連絡があったことから.西村さん自身,百花のサイトはこれまでも見て下さっていたそうですが,もともとは宮崎県の養蜂家の方に紹介されたとか.何となくつながりができつつあるなあと感激しつつ,行ってきました(直前まで行くか行かないか迷ったこともあり,ついでに九州新幹線にも乗ろうと,全行程鉄路でいってきました.町田から久留米までたった2回の乗換えです).実は,近々「教育でのミツバチ利用」の話をしなきゃならないので,参考にと思っていったのですが,期待を上回る収穫でした.先生のお話と,ハチミツ(今年の巣蜜と16年もののハチミツ)の試食がセットになった2時間,どんな内容だったのか,ちょっと夏ばて気味の辛口ミツバチに進行を手伝ってもらって紹介します.なお,この日の参加者は41名で,ミツバチネタだからかやはり女性率が高かったですね.

神崎先生は,近畿大農学部(受験の時には玉川も候補だったそうだよ)のご卒業で,卒業研究でスズメバチとかかわることになり,駆除専門業者で研修された.それが縁で,教員になってからも社会福祉協会などからの依頼で,駆除を手伝っているうちにミツバチも駆除対象に入ってきて,でもこれは飼えるということで始められたそう.17年前のことだとか.

この部分が,講演会のチラシで「ハンカチなしでは聞けないお話」となっていた部分.ご自宅で採れたハチミツを8年間,校長先生が替わるたびに持っていって,機会をうかがっていたけれど,いつも「先生のハチミツおいしいねえ〜.おいしいけど,学校でミツバチ飼うってはいわんといて」といなされていたそう.そこで先生は一計を案じた.それが「巣門体験」.ニホンミツバチの巣箱(神崎先生が使っている巣箱は重箱式)の最下段は,ミツバチの巣箱の玄関部分.この正面の板を取り外して,中に素手を差し入れるというもの.校長先生,町の教育委員会や県教育事務所の所長(+その運転手さんまで)にこれを体験させて,ミツバチの小さな翅が作る風を感じてもらい,同時に安全をアピールして,遂に6年前に学校養蜂がスタートしたんだそうだよ.もちろん,なぜという部分には,小学生の教科書の中での蜂類の扱いが「危険な生き物」一辺倒だったという点もあるとか.

いや,ニホンミツバチさん(つい「さん」がついちゃうな)だからって必ず安全ということではないんだそうだよ.ニホンミツバチは刺さないという人は多いけど,そういう人だって刺されたことはあるに違いないし.先生によれば,静かな山の中にいるニホンミツバチはやはりいきなり人の手が入ってきたら騒ぐそうだよ.先生のミツバチは,道路際の少し騒がしいところに置かれていて,多少ことでは騒がない体質になっていたらしい.

程度問題だろうね.それとやっぱり花があるかどうかが問題だと思う.採れているハチミツの量も結構なものだけど,実際,小学生の頭の高さよりも高い7〜8段の重箱巣箱で飼われるくらいの強群だし.多少のことでは動じないのかもね.ミツバチの攻撃性は,環境が作った下地に,人間などの与えるストレスの強さで決まると言えるから,やはり環境がよかったことと,適度で,慣れることができる程度の騒がしさだったんだと思う.刺されないために慎むべき5つのこととして「つまむ」「はさむ」「つぶす」「玄関以外から入る」「蜜を盗む」を挙げておられたけど,どれも人間だって同じでしょうといっておられた.人間がされて嫌なことはミツバチにもしない.あたりまえのことだけど,普通にはそういう理解はないかもね.そうやって刺害を極力防ぐことには成功してきたそうだ.

こどもたちは観察日記を交替でつけたり,採蜜体験,自分用のハチミツ瓶のラベル製作,蜜ろうの精製とロウソク作りとか,結構いろいろやってきているね.もちろん,観察していると,分業も見えてくるけれど,そこからクラスの中での役割分担の意味を悟ったり,蜜や花粉を誰のために集めてくるのかというところで,働いて稼いでくる親の位置づけを理解したり,小学校ならではの学習効果はあるようだよ.特定の教科というのではない教材としてミツバチが存在できているというのかな.

小学生らしい感じだけどね.現在,高校2年生の卒業生たちが寄せてくれた感想があって,「ニホンミツバチを見つけたら,久しぶりに友だちに出会ったような反応をします.ハチって怖くないんだよっていろいろな人に教えたいです」とか,「ハチがかわいく思えるようになった」なんてのも.経験したことがすばらしかったのは確かだろうし,それ以上にミツバチという生き物を適度な距離感で見れるようにはなっているんだね.

学校養蜂のハードルは,1)学校管理者,2)保護者,3)隣接住民,4)地元の養蜂家で,学校管理者に関しては,苦節8年目で何とかクリアできたのは最初にいった通り,もちろん保護者は協力的.隣接住民は,「ダメなら諦めます」と弱気な先生に「うちの畑を貸してやるからやれ」とまでいって下さったそう.地元の養蜂家は,神崎先生の方が養蜂暦が長い(当時で12年目)とわかると「いろいろ教えて」ということになったんだって.

先生の書いたものを読むと,ふるさとに魅力を感じられるこどもを育てたいというのが先生の中の中心命題のようだね.実は過疎化で学校の統廃合が進んでいて,せっかくの現場になった南小田小もあと2年で閉校になるそうだ.田舎からの人口流出はなかなかとめられない.でも一方で,町のこどもたちは町の暮らしをそれほど肯定的には見ていないというアンバランスな状況にあるんだそうだ.だからこそ,魅力ある田舎暮らしを体験させたいという思いがあって,ニホンミツバチさんということになったんだと思うよ.

最初の思いはともかく,まだ情報収集段階だから,これからでしょう.それで,今回の講演会が最初の勉強会だったらしいよ.でも,ミツバチにピンと来て,いろいろな可能性や魅力を感じているところは,百花の面々とも通じるものがあるよね.
そもそも,ミツバチを学ぶことは「養蜂」以外の形でもできる.とにかく飼わなきゃというのは「ミツバチ」というキーワードから来る強迫観念に過ぎないよ.飼育に踏み切った南小田小は小規模校だってこともあったし,何より神崎先生がミツバチを扱える人という利点が大きいよね.周辺の豊かな自然もあるわけだし.そんな恵まれた条件はないという中で,じゃあ何ができるっていう部分はあんまり整備されていない(だから無理して飼っちゃう).学校や,親や,こどもたちだけではどうにもならない部分も多い.でも,そう思えば逆にやることが何かは見えてくるのかも知れないよ.どうにもならないことができるのは誰だろうって考えればいいという部分もある.先人としての神崎先生のお知恵も拝借しながら,こどもたちがミツバチと「友だち」になれることを目指していきたいし,ミツバチが住んでいる空間に,田舎であれ町であれ,自分のふるさととして魅力を感じて欲しいね.そのために,大人たちがやっているいろいろな活動が連携していけるといいだろうね.
【ミツバチの気持ち by Junbeeの最新記事】
神崎さんは大きなみつばちのような人だと感じました。
ミツバチがつないでくれたご縁ですね。
子どもたちの成長とともに、ミツバチの生息環境も整っていく、そんな活動にお互いしていきたいものです。
ブログオーナーのお話を聴いていますと、我が校でこのような試みができたことは、非常にラッキーだった事と感じました。また、洋バチ業務にもかかわった関係から、比較しますと洋バチの営みからは見えないものが和蜂には見えてくる。ような気がします。
学校養蜂から見えてきた教育的視点をきめ細かく分類し、これからの皆様のお役に少しでも立てればとおもっています。
現在、
「人権教育の視点 学校養蜂から見えてくるもの」in 総合的な学習
のタイトルでまとめています。進捗度85%頑張ります。
南小田って,養蜂には非常に適していた学校だったんですね。一年だけでしたが,その南小田で先生と一緒に活動できたことは私にはとてもすばらしい経験でした。
まだ『飼ってみようかな』のレベルにはほど遠いですが,蜂についての知識が増え,蜂蜜にはうるさくなりました。
機会があれば,またお会いしてゆっくりお話がしたいなぁと思います。
4年間、神崎先生と仕事を一緒にさせていただきました。今もなお精力的にがんばっていらっしゃいますね。
南小田で採れた蜂蜜は、今の学校でも身体にとても優しくっておいしいって評判です。環境的にもすばらしいところで採れたものだからでしょう。
ミツバチが少なくっているとは、聞きますが、神崎の蜂蜜の名は高いです。子どもたちと一緒に地道に養蜂活動を続けてくださいね。そして、感動を与えてやってください。
素晴らしいこのお話に、今頃詳しく見せて頂きました。遅ればせながら、感動しました。
その神崎先生は、今 どちらでご活躍なのでしょうか?
もしかして、8チャンネルFB会の あの神崎様では ? ?
仮に、そうだとしてみたらイメージがつながり、またまた新たない感動が起きます。それは、私が知る神崎さんは、今尚夜中まで出かけて行って蜂全体の処理?に当たっておられて、到底マネできないご活躍ふりだからです。
私は、今年の終戦記念日で傘寿となってしまいましたが、埼玉で里山借りて日本蜜蜂の保護活動に細々と取り組んでいます。
近くの小学校の校長先生に、普段児童が行かない屋上で、蜜蜂を飼育する研究班は如何ですか?蜜蜂の面倒は私が看ながら教えますとアプローチしたことがありました。いきなり言われても・・・笑ってお終いでしたが。
埼玉県入間市 玉利孝敏
コメントをありがとうございます。
そうです。その神崎さんです。
神崎さんより、「久留米はちっこくらぶの取り組みは牛歩ではありますが、確実に進んでいます。廃校目前の小学校のPTAが学校養蜂で特色性を持たせようと働きかけているようです」とのことです。
ところで、久留米はちっこクラブ とは、いつ頃から始まったのでしょうか? 蜜蜂は、今何群飼育中でしょうか?
私の巣箱は自作ですが、すべて前面を開けるように製作して、透明板(文具転用)でいつも安全に観察できるものですが、小学校のクラブにはうってつけの巣箱です。近ければ差し上げることも出来るのに・・・ここは、画像はダメですよね。
はちっこクラブさんは、別の団体なので、直接、お問い合わせいただけますでしょうか。
透明板があると、とっても観察しやすいですよね!