2011年06月09日

「ハチミツでダイエット」は,本当?

かなり前の「ミツバチの気持ち」 (2010年9月25日付)の記事「『?』なハチミツの宣伝文句−価値の創造からは逆行?」にちょっと(2か月近い?)前にいただいたご質問,「ハチミツはダイエットによいか」にお答えします.たぶん皆さんも知りたい内容なので,改めて記事として書いてみました.ハチミツに対する誤解(というより過剰な期待)をどう解くべきか,実に悩ましいですが,根底にあるのは,特定のものをありがたがる風潮.薬の場合は,ある成分がよいということは確かにありますが,食品の場合は,やはりバランス感覚は不可欠です.では,いつものように辛口ミツバチと一緒に進めていきます.

minilogo.pngまず甘味度について,ハチミツは砂糖の2倍甘いのは本当かっていうところから確認しておこうよ.
糖類などの甘味を比較評価するための指標として,「甘味度」というのがある.ただ,これは機械で測るのではなくて,パネラーに比較点をつけてもらう相対的なもの.通常,標準はショ糖(つまり砂糖)で,これを100として,他の糖を評価する.教科書的には,ブドウ糖が64〜74,果糖が115〜173と幅がある(数値は文献によってさまざま).ハチミツを砂糖と直接比較するのは難しい.ハチミツには糖分以外の味覚成分(酸味や苦味など)が多いしね.もちろんハチミツを果糖とブドウ糖の混合物と考えることもできる.ただ,全体の濃度が低いと,同じ濃度のショ糖よりも甘味を感じにくく,濃度が高くなると混合糖の方が甘味を強く感じるらしい.「ハチミツは砂糖の2倍甘い」というのは,原液の話なら妥当そうだけど,薄めた状態では過剰評価になっちゃってるだろうなあ.

minilogo.pngハチミツっていったって,その中の果糖とブドウ糖の組成比は蜜源によって異なるよ.ハチミツならみんな同じ甘さということはないはずだよ.酸味や苦味によっても甘さの感じ方はちがうしさ.ハチミツ同士を較べた人はいないの?
アメリカで1974年に10種類のハチミツの甘味度をパネラーを使って調べた人がいる.それぞれの糖組成と照らし合わせると,やはり,果糖が多いハチミツの方が甘味を感じやすいという結果だったようだね.その点で,砂糖はショ糖という単独の糖だけれど,ハチミツは複雑だし,有機酸やミネラルなど味に係わる成分が含まれるから単純に2倍甘いというのは適切な表現ではないね.ハチミツによって異なりますよ,というところか.果糖が多いという意味ではニセアカシアのハチミツはやっぱり甘く感じやすいね.

minilogo.pngアイスクリームの場合など,低温での甘味の感じ方っていうのが次の確認事項.果糖は冷たいほど甘く感じるの?
これも誤解されやすい.ショ糖は高温で甘味が強く,低温になると甘味を感じにくくなる.果糖は温度によらず安定した甘味らしい.だから同じ濃度のショ糖と果糖を温度を変えながら較べると,低温では果糖の甘味が際立つし,高温ではショ糖の方が甘くなるということらしい.アイスクリームなどには果糖の多いハチミツが甘味として向いているのは事実だと思う.でもハチミツ入りのアイスクリームなら甘味料は少な目だからなんて,食べ過ぎたら意味ないしねえ.

minilogo.pngお次は,これもよく聞かれるハチミツのカロリー.ミツバチ的には,ハチミツはエネルギーの素なんだから,これが低カロリーでは何のために作っているかわからなんですけど.
そりゃそうだ.でも砂糖100gのカロリーが384kcalに対して,ハチミツは294kcalといわれている(食品成分表による).単純比較すると砂糖に対して2〜3割少ないことになるけど,ハチミツには水分が20%前後含まれているから,この点は当然といえば当然なんだけど.

minilogo.png水の分は当然少ないよね.それはミツバチとしては納得.で,砂糖の代わりに砂糖よりも甘いハチミツを使えば当然摂取カロリーは減るから,ダイエットにいいということなのかな?
そうだねえ.例えば料理で砂糖を100g必要としているところに,甘味が2倍で,カロリー25%減のハチミツを使えば,同じ甘味を確保するためにはハチミツは半分の50gでよさそうだし,その結果,カロリーは147kcal,つまり砂糖100gのカロリーの40%ほどということになるね.ただ,そこには大きな落とし穴がある.料理の場合,他の材料は変えないわけだから,あくまで甘味の分でのカロリーが減るということで,料理全体のカロリーが40%減るということではない.例えば肉じゃがのような料理だったら,ハチミツで減る分なんて,ジャガイモや牛肉分のエネルギーに較べれば微々たるものだろう.

minilogo.pngなるほどね,でも「塵も積もれば・・・」ってことなんじゃないの? 摂りすぎたカロリーは脂肪となって体に蓄積するのが問題なんでしょう? ハチミツは体に蓄積しにくい?
ミツバチは巣の中にたくさんハチミツを貯えているよね.でも,人体に貯蔵される糖質量は,まずグリコーゲンとして肝臓に70g,筋肉に400g程度.ブドウ糖は血中に数g,脳や神経など活動レベルの高い組織に20gほど.この合計500gほどの糖質のカロリーは2000kcalで,普通の人の1日の基礎エネルギー量.つまり実は貯えどころか完全な自転車操業状態.とはいえ,これ以上に摂取された糖はすべて脂肪に変換されるといわれる.脂肪に変換されやすいのは,肝臓では果糖で,筋肉ではブドウ糖となる.そのあたり,摂りすぎないようにするのはなかなか難しそうだなあ.

minilogo.png糖質でカロリー満たしちゃったら,栄養として必要な脂肪やタンパク質を,カロリーの観点からは摂取できなくなっちゃうなんてことにもなるんでしょう? 食べ過ぎには気をつけなきゃ.ところで,ハチミツは吸収がいいといわれるよね.砂糖とハチミツで何か違いがあるのかな?
人間にとってはエネルギーとして利用できる糖は基本的にはブドウ糖.だから,ハチミツを食べると,その中のブドウ糖は小腸壁から積極的に取り込まれて,血糖になって必要な場所に運ばれる.果糖は,それほどの積極的な吸収ではないので穏やかに取り込まれる.でも肝臓で急速にエネルギーに変えられる.一方,砂糖(ショ糖)も小腸で果糖とブドウ糖に分解されてから吸収されるから,そのあとは同じ道筋なんだけど,その消化の「手間」分だけ,エネルギー効率ではハチミツがいいとはいわれるだろうね.でも,どのくらい有意な差かなあ.

minilogo.png結局のところ,女の子としては,ハチミツ食べてダイエットしたいわけでしょ? それはリーズナブルなの?
まあ,このご時世,女の子だけではないかも知れないけれどね.でもハチミツだからといって,決してカロリーがないわけではないし,砂糖の使用量を控えるといっても,それは総合的な食習慣の問題だし,また栄養バランスの問題にもつながる.砂糖をやめて,ハチミツを食べ続けるとダイエットができるかのような宣伝文句は現実的ではないだろうね.脂肪を食べたがらない人もいるけれど,栄養的には必要なものだし,実は忌み嫌われちゃう皮下脂肪も,適度な量であれば,皮膚がなめらかで色白になって美しさを得られるものなんだそうだ.健康ということに関していえば,いかに上手に食べるかが課題だよね.ミツバチだって,ハチミツばっかり食べているように思われているけれど,本当は,必要なタンパク質などはミルクの形でもらってたりするし.あまり食べ物の本質的ではない側面にこだわると,精神衛生上もよくない.基本は,バランスよくいろいろなものを食べるということだろうね.ミツバチも一種類の花粉だけ食べてると免疫能力が低下するなんていう研究もあったよね.

minilogo.pngそうなんだよね.ミツバチ的には,花粉がよりどりみどりな状態が望ましいなあ.けっこう探し歩いても花がないときは,やむなく手に入るものだけの偏食になっちゃう.巣にある程度の貯えはあるし,若い娘たちがミルクに変えてくれるんで,幼虫たちの栄養状態に影響が出ることはまずないけれど,花が次々咲いくれるような環境なら,ミツバチは健全で,安心して暮らせます.その点は,同じ環境を利用している人間の皆さんもよろしくご理解お願いします.砂糖かハチミツで悩むより,外に出て種まきとかした方が,健康にもいいですよ.その花で私たちが作ったハチミツ,喜んで差し上げます!(食べ過ぎないようにはして下さい)


参考
橋本仁・高田明和(編).2006.砂糖の科学.朝倉書店.
吉積智司ほか.1986.甘味の系譜とその科学.光琳.





posted by みつばち at 17:54| Comment(0) | TrackBack(0) | ミツバチの気持ち by Junbee | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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