2011年02月14日

はちみつのたね

一昨日(2月12日)は,長野県富士見町での第3回みつばち百花セミナー(知ってもらざぁ おらほーのまち会/富士見高校養蜂部主催)で,「ミツバチとひとがうれしいガーデン作り」講座に参加してきました.そして昨日は,子どもを連れて地元の図書館に行き,昨年11月に出たばかりの,ちばみなこさんの「ポムとナナ はちみつのたね」(岩崎書店)という絵本を借りて来ました.子グマのポムとミツバチのナナ,森の動物として仲良く暮らしてはいるものの,クマはハチミツが大好きでつい手が出てしまう.ある日,クロクマに家を破壊されてしまった傷心のナナは,どうしたらクマとミツバチが仲良くできるのか考えます.ナナが思いついた方法は? ミツバチとクマさん,そして私たちができることって何なんでしょうか.いつものように辛口ミツバチと一緒に進めていきます.

まずは富士見の話から.前回のセミナーで富士見にどんな花があるかをカレンダー形式でまとめて(寸劇から動画編集へ,高校生たちの進化は止まらない),今回はそれを使って仮想のガーデンを作ってみることに.現実感のあるワークショップで,3回の中できちんと構築されていくものがある.そこで,補足情報として,現地のニホンミツバチのハチミツの含有花粉から得られたミツバチが利用した植物の情報(これは事務局長の労作)を紹介してきた.人の目から見た花の情報とはちょっとずれがあることも伝えてみた.
minilogo.pngハチミツの中にはどうしてもたくさん利用した花の情報が残りやすいから,主要なものは,富士見では面積的に広く栽培されているソバやヒマワリってことになっちゃうね.人間は花を種類としてカウントするけど,ミツバチから見たら,面積の大小や開花期間の長短は,種類以上に重要な質の差でもあるからね.でも,こうしてみてみると,ミツバチがどんな花を利用していたのか,ニホンミツバチさんの場合は採蜜まで巣の中に貯えられていた期間が長いこともあるし,巣を圧搾しての採蜜だから,普通のハチミツより花粉が多くて特徴が見えやすいのかもね.

なるほど,確かに花の種類でカウントしちゃうなあ.それは花とのつき合い方のせいだろうかね.大面積で栽培されるものが主要な花粉種になりがちなことは,やっぱり面積の重要性を示してはいるようだね.ただ,開花期間が長いものがどのように反映されるかは,一部のマメ科の草本とかハルジオンとかがそうだろうと思う程度で,植生の調査もついてこないと難しいとは思った.で,面積の重要性ってところは,狭い庭ではあまりミツバチにとって魅力的なものにはならないってことになっちゃうのかな?
minilogo.png面積の大きい方をよく利用するというだけで,狭ければ利用しないと決まったことでもない.ソバやヒマワリは畑にたくさんあるから,あえて狭い場所でそういうものを植えてあっても魅力は感じない.今回いろんなハチミツに,ミツバチが大好きなシソ科の花粉が含まれていたけれど,ハーブガーデンでは,シソ科の草本はけっこう主役だから,面積的には狭くても魅力的だと思うよ.場所ごとに花期がずれていたりすればそれはそれでありがたい存在だし,それほど量にこだわらなくてもいいと思う.それに,ミツバチ以外のハナバチさんは生活圏が狭いものも多いから,量は問題じゃないし,きっと役に立ててもらえるよ.

仮想のガーデン作りワークショップでは,それぞれのグループが独自のコンセプトで植栽構成を考えたのに,偶然だろうけど,ミツバチにも人間にも「おいしい」というのが共通テーマになってた.ガーデンを作る立場で,作り手として利用の目的がかなって,同時にミツバチにも利用してもらえるなら,win-winな関係ってことで,ミツバチのことを意識しやすいという効果はありそうだった.
minilogo.pngミツバチのためだけに作ってくれるんでもミツバチ的にはまったく問題ないんだけれど,その関係を長く維持する上では,人間の方でも楽しんでくれた方がいいってことだよね.自分が作ったガーデンにミツバチが来ることに「うれしさ」って感じてもらえるんだったら,それはミツバチとしてもありがたいことだし.

「はちみつのたね」は,そのことをうまく伝えている.ナナは家を壊されないように,クマさんと仲良くできるように,クマさんたちに「はちみつのたね」を配る.クマさんたちはこれでたくさんハチミツができると喜んで,鍬や鋤をふるってこのタネを育てる(この絵がかわいい).でも,花は咲けどもハチミツなんて実らない.だまされたとナナに詰め寄るクマさんたち,でも,この花からミツバチがハチミツを作るんだと聞いて納得して帰って行く.絵本の世界で単純化されているけれど,この「納得」は重要なプロセスだなあ.
minilogo.pngクマさんは,ハチミツが欲しい.手軽に自分で手に入れられるなら,ミツバチに恨まれることもない.だからタネを育てる.でもタネからは花しか咲かない.ナナがハチミツが実るといってタネを配ったのは方便として許してもらえそうだよね(絵本の中のナナの普段の生活は,仮想のミツバチである私がいうのも何だけど,かばってあげる理由も感じないほどうらやましい).ミツバチという作り手がいて初めて花からハチミツができる.その作り手からハチミツを分けてもらうためには,花を育てなくちゃと汗をかく.ミツバチは受粉は手伝うけれど,植物は育てられないし,現実世界では,クマさんも花を植えてくれるわけではない.人間は,ミツバチが減っている,ハチミツの生産が減少してるって気がついているんだから,この絵本でのクマさんは,現実世界では人間なんだろうね.「納得」して花を増やしてもらうために,ミツバチが「タネ」を配らないといけないのかなあ?

ミツバチを家畜として飼う以上,飼う人間が受益者なんだから,問題が生じて原因が把握できているなら,受益に見合う何らかの「提供」という部分が必要ってことだろう.みつばち百花も「ミツバチのために,今,できること」というのをテーマに1年間活動してきたけれど,現実に「できること」を「やる」のは難しい.できそうなことを考えたり,言葉で訴えることはできても,その間,具体的に何ができたかを考えると,やっぱり心許ない.ハチミツのためになら花も育てちゃうクマさんたちの方が,よっぽど実行者ってことになる.それでも,ミツバチに代わって「タネ」は少しずつ配ってきたのかな.クマさんが動いたのは,住んでいる森は共有だという世界観もあってのことだろうね.人間は,つい家畜が飼われている現場を,自分たちの生活空間と同じ空間にあると想像し損ねる.農業も林業も,生活から離れすぎているから,仮にタネを配られても,それをどうしたらいいかわからないかも知れない.でも,減ったと問題視するミツバチやハチミツがどう増えるのか,どうできるのかがわかれば,「タネ」の使い道は明らかだろう.富士見のセミナーで,「タネ」が育っている印象になるのは,参加者とミツバチや花,庭作りの実際的な距離の近さに負う部分が大きいように思った.
minilogo.pngミツバチは,住んでいる環境がすべてだから,そこにある土地を,人間が畑だとか,ガーデンだとか,空き地だとか,はたまた耕作放棄地だと呼ぼうと,利用できるなら利用する.花がない土地が多くなれば,自分たちの巣のある場所は不適切と考えるしかない.ニホンミツバチさんのように効果的に「逃去」して巣の場所を変えていけるのならいいけど,セイヨウミツバチはそれが苦手で,今の場所でやれるところまで頑張っちゃう.その意味で,自分たちで花を育てられないのは,現状では生き物としての欠陥かも知れないけれど,私たちが想定している世界は,いろいろな花の受粉を手伝えば,群れを維持するだけの餌を確保できる世界なの.ミツバチを含めて,あらゆる生き物が自分が生息する環境というものを「想定」して生活の基本部分を組み立ててる.想定外の環境になるということは,その生き物にとっては生きにくくなって,生きていく場所を失うこと.現状が,ミツバチの想定環境から外れてきた感じがするのはなぜかなあ?

その責任の一端は,確かに人間のわがままな土地利用にあるってことだろう.だからこそ,ハチミツはどこから来るんだろう,といった想像ができないってことが,問題の根底にあるっていえるのかも知れない.クマさんたちが,ハチミツの実る植物があると思っていたように,「もの」の来歴ということに関して,ちょっと無関心すぎるのかも知れないね.花があれば何でもいいんだろうとか,どのくらい咲いていればいいのかという量的なセンスも欠落している.そういう想像力の欠除は,知識で補うことはできそうだけど,肝心の正しい知識もなかなか入ってこない.
minilogo.png環境の変化はもちろん人間だけが原因じゃないよ.温暖化でシロクマさんがピンチに立っているのは,人間が出している炭酸ガスのせいだけでないことは,生き物はみんな知っている(人間だけが,自分たちのせいだと思っているらしいね.で,そういう思い違いも商魂たくましく利用するのが人間だよね,感心する〜).想像力の欠除っていうよりも思考や知覚の停止なんじゃない.環境っていうのは,テレビやインターネットの情報ではなくて,自分の五感で感じて,頭の中で統合して知覚するものでしょう.天気予報を見て今日は寒いぞって,それおかしいでしょ? だってそこで生きているんだよ.すべての生き物が,地球規模の環境を関心事にはしない代わりに,自分が生きている環境の変化には細心の注意を払っている.人間は,自分じゃ見たこともないものまで心配したり,大騒ぎするけどさ,自分自身の身に降りかかっていることに関してはちっとも真剣に考えていないようだよ.そういう意味で,手にした「タネ」で自分なりの「ガーデン」を作って,ミツバチや鳥さんたちが来るのを楽しむべきなんじゃないのかな? やれることはだから本当は人それぞれ多様なんだと思う.

人間は,環境をよくも悪くもできるんだそうだから,その能力はうまく使って欲しいです.「できること」を考えついても,実際に実行することがどんなに難しいかは,ミツバチにもわかることだとは思います.ミツバチに較べれば長くても,確かに人生は短い,でも,人類はまだまだ続くんでしょう.「千里の道も一歩から」は人間の言葉の中でもいい言葉だと思っています.人間の言葉なんだから,信じてみたらどうですか? もっと「タネ」を配らないとダメですか?

posted by みつばち at 17:19| Comment(0) | TrackBack(0) | ミツバチの気持ち by Junbee | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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