2010年09月16日

ニホンミツバチは本当に病気に強い? 生物多様性の観点から

市長と市議会のバトルは盛り上がっているけれど,その名古屋で開かれる生物多様性国際会議は盛り上がりに欠けてますね.でも,こういう機会に勉強しようと,関係の本を読みあさっています.総合地球環境学研究所の副所長を務める佐藤洋一郎先生の「コシヒカリより美味い米−お米と生物多様性」(朝日新書)は,生物多様性という問題を,お米という身近な題材を例にとって,とてもわかりやすく解説しながら書いています.一読お勧めです.読んでいて,ミツバチにもやはりこの観点が必要だと思ったことがありました.もちろん科学的検証もまだない思いつきですが,一般に,ニホンミツバチは病気に強く,セイヨウミツバチは弱いといわれていることに,ある理解が必要ではないかと思えてきました.つまり,これもまさに生物多様性の話だったのでは,と.辛口ミツバチと一緒に考えてみます.

生物多様性には3つの段階があって,大きな方から,生態系,種,遺伝子の多様性というのがある.このブログで扱う蜜源・花粉源などの重要性は,種多様性の問題でもあったんだけど,セイヨウミツバチという種に関する問題は当然,遺伝子の多様性の問題として扱われることになる.
minilogo.pngそれが病気に対する弱さとどう関係しているの? 野生と家畜の差だという理解でいたんでしょ?

そうそう,野生と家畜の差なんだけどね,それ自体が生物多様性の大きな概念の中で重要だったということ.つまり,家畜は,遺伝的多様性が乏しい集団で,野生生物は遺伝子の多様性の観点からは豊かだということだ.
minilogo.pngだから,それと病気とどんな関係なの?

セイヨウミツバチは日本では導入種だし,性質的によいものをわざわざ選んで入れているから,当然,遺伝的多様度は小さい.集団飼育するから,交尾の相手も似通った遺伝的背景を持っている.本来,ミツバチは多回交尾によって,コロニー内の遺伝的多様度を上げることで環境への高い適応性を発揮している生物なのに,交尾可能な集団内の遺伝子の多様性が乏しいなら,その機能は働かない.
minilogo.png結局,遺伝的多様度がある集団中で小さいということは,使い回せる遺伝子にいろいろなタイプがないということか.でも,そういうふうに選抜されて,セイヨウミツバチにだっていろいろな品種ができてきたんだから.あるいい性質を固定するためには必要なことだったんだよね,きっと.で,それと病気は?

その状態で,もし,ミツバチに影響のある病気が発生したら,ある集団のセイヨウミツバチは,ほとんどが影響を受けることになる.遺伝的に抵抗性のミツバチが出現する可能性は低いからね.
minilogo.pngまだまだ野生で,遺伝的多様度が高いニホンミツバチさんなら,影響を受けるコロニーがあっても,同じ集団の中で影響を受けないコロニーもあるってこと?

まさに.東南アジアでかつて猛威をふるったタイサックブルードというトウヨウミツバチの病気は,その病気の流行ゆえにタイサックブルードに抵抗性のあるトウヨウミツバチを作り上げたともいわれている.それが,野生の強さだろう.たくさんの遺伝子を持っているから,弱いものも強いものもいる.病気が来るまでは,その強弱は,生存には関係ないけど,一度病気が来たら,片方には淘汰が起こる.
minilogo.pngその点,セイヨウミツバチはかなり遺伝的に固定されてきたし,日本へはいくつかのルートで入ってきているとはいえ,似通ったものが入ってくるだけで,遺伝子の多様度は上昇しないということなんだね.

佐藤先生の本の中に,過去100年間に愛知県で作付けされた水稲の品種数の変化を示したグラフがある.1965年をピークに,以前も現在も品種数は少ない.品種は種とは違うけれど,水田生態系におけるある意味での種多様度と考えると,昔と今ではどちらも低かったということになる.ところが,昔の品種というとらえ方と現在のそれは違っていて,以前は,それぞれの品種から性質の異なるものを抽出して新品種を作っていたくらいだから,そもそもばらつきが許容されていたけれど,現在の品種の概念では,品種とは性質として斉一なものになっている.つまり,かつては,種多様度の低さは,種内の遺伝子の多様度で補えていたけれど,現在は,種多様度も,その中の遺伝子の多様度も低下してしまっている.それは,広域に見た水田を一つの生態系と見なしたときには,やはり脆弱な状態に見えるだろう.日本におけるセイヨウミツバチはまさにこの状態に近いんじゃないかな.
minilogo.pngニホンミツバチさんは,その点で,まだまだ遺伝子の多様度が高いということなんだろうね.でも最近は,ニホンミツバチさんにも原因不明の病気が流行っていたりするんでしょう?

蜂児を捨てるというやつだろう.そのまま蜂群が崩壊したという事例もあれば,先般訪問した富士見高校の養蜂部の調査では,給餌などの処置で,蜂児を捨てる行動が収まった事例もあったようだ.まだ原因がわかったわけではないし,病気かどうかも判断はできないけれど,かつての東南アジアでのタイサックブルードの流行のように,こうした異常現象の流行後には,例えばこれが病気だったら,病原に対して抵抗性のものが分布を拡大するのかも知れないな.
minilogo.pngそういう場面で,それこそCCDだって遺伝的多様度の低さが問題なのかも知れないけれど,セイヨウミツバチとすればどうしたらいい? やっぱりニホンミツバチさんの方がセイヨウミツバチより優れているという一般的な理解の方が正しいの?

遺伝子の多様度を確保できている集団として存在できているということが,優れている状態にあるという意味であって,個々のミツバチの種や,それぞれのコロニーに優劣があるということではないと思うよ.もっと飼いやすい,あるいは生産性の高い,ニホンミツバチを選抜して系統や品種を固定していくという試みをするなら,今現在セイヨウミツバチがかかえる問題を,そのままニホンミツバチも背負うということだから.逆に言えば,今アメリカなんかではセイヨウミツバチの優良系統として,ミツバチヘギイタダニに抵抗性のあるものを作出している.その遺伝的性質はロシア産のミツバチで見つかったもので,何段階かの掛け合わせで,ある程度効果のあるものができているようには聞こえていたね.つまり,セイヨウミツバチもまだ,この地球上には,優良な遺伝子を持っているということなんじゃないかな.
minilogo.pngセイヨウミツバチにとっては,少し希望が持てる話だけれど,ということはニホンミツバチの飼育を,もっと家畜化した形に移行して,飼いにくいものを排除したりしていくと,セイヨウミツバチと同じ運命が待っているということかな.

実際には,野生状態のニホンミツバチがいるので,交尾のたびにいろいろな遺伝子が戻ることになるだろう.それは飼育向きの系統を作出するという観点からは不都合なことだけど,ニホンミツバチという生物にとっては有利な,あって然るべき状況といえるだろうね.その状況を守るためにも,飼育されているミツバチと野生のものの生息環境が分断されてしまわないように,同じ土地を利用する人間が,多少なりとも土地の開発などに関して考える必要はあるだろうね.みつばち百花の趣旨に賛同して,あるいは独自に,ミツバチやハナバチの環境として花を育てることには,ミツバチの栄養的なサポートという意味づけもあるけれど,こうした遺伝子の交流を維持・促進するという効果もありそうだ.花を植えるときに,種類が少ないから種多様性としての生物多様性には貢献できないとしても,そのことがいろいろな生物の遺伝子の多様度の維持には役立っていると思えたらいいのかも知れないね.
minilogo.pngその点で,ニホンミツバチさんの遺伝子は国内にあるものだけってことになるから,大切にしなければならないね.採蜜技術を優先する飼い方だと,そうした巣箱や技術,あるいは人間との関係に適性のある特定の系統ばかりが増えることになってしまうかも.採蜜を目的としない,地域のニホンミツバチさんの遺伝子の多様度を維持するための巣箱設置なんていうのも,実際には意味が出てくるんだね.いろいろな性質を持ったニホンミツバチさんが同じように住みやすい巣箱があればいいのかな.それにしても生物多様性って大切だったんだ.ちゃんと勉強しておかなきゃ.名古屋も,ぜひ頑張って下さい!


posted by みつばち at 02:34| Comment(0) | TrackBack(0) | ミツバチの気持ち by Junbee | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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