2010年06月01日

救世主も激減? 救世主が減るほど到来してたのに,いまや世も末?

中日新聞の環境を考えるシリーズで「ミツバチの沈黙」が連載されています.第6回は「救世主も激減」とか.タイトルをみても何のこと? 救世主が減るってどういうことよ,みたいな戸惑いを感じました.

前半に登場しているのは長崎県のニホンミツバチ養蜂家の久志さん.海外の学会にも参加したり,ある意味とても熱心なお方です.精力的な執筆活動もされていて,「ニホンミツバチが日本の農業を救う」に続いて,「我が家にミツバチがやって来た―ゼロから始めるニホンミツバチ養蜂家への道」が出版されています.それ自体は,個人の主張であり,個人の姿勢であるので,とりあえずは置いておいて,今日はこの新聞記事(Web版)について辛口ミツバチの意見を聞きましょう.


minilogo.pngニホンミツバチさんが日本の農業を救ってくれるっていうなら,それはいいことだと思うよ.私たちセイヨウミツバチも助かる.ただ,日本の農業っていっても,何でもかんでもミツバチが活躍できるってものでもないようには思うけれど.
この記者の方は,久志さんが「日本の農業を救うのはニホンミツバチだ」と信じているから,ニホンミツバチに「救世主」という呼称を与えたのだろう.タイトル自体は記者の方が本人の意思でつけたのではないかも知れないけれど.

minilogo.png救世主って,世の中が滅びそうな頃に現れて,みんなを救ってくれるっていう人のことでしょう?
人なんだか神なんだか.でも,それを常時に使う場合は,敗退傾向になるのを挽回できるとか,状況を改善する力を持つ者という程度の理解かな.

minilogo.pngそういう意味ならニホンミツバチさんが救世主でも悪くはないのかもね.でも,救世主って激減するものなの? そんなに減るほどもともといたってことなら,もう充分に救われてたはずじゃないの,日本の農業?
確かにね.この記事の展開では,「ニホンミツバチ=救世主」,「ニホンミツバチ=激減」,したがって「救世主=激減」ということだろう.「救世主」という言葉に「激減」という言葉をつなぐのには抵抗がなかったんだな.最近の記事は,理科教育上どうかなというものが多いけど,次は国語教育上でも問題にされそうだな.ハンドブック使っているだろうにねえ.

minilogo.pngでも,本人たちが救われてないんだから,ニホンミツバチさんが「救世主」ではなかったし,ニホンミツバチさんの激減は,佐世保の話だけが書いてあって,でも,久志さんも長崎県の中で増殖にも成功しているし,いろいろ病気や農薬被害の話もある一方で,ハチミツが高価に売れるから飼う人も増えているみたいだよ.ふたつのつながらない「イコール」でこのタイトルにしたわけ?
せめて「?」くらいはつけて欲しかったかな.一人の信条と,ひとつのケースでこれだけのタイトルを書く.文章にとってタイトルは顔だからね,多くの人はそこで中身を読む前にいろいろな判断をしてしまう.明らかに不用意な感じだね.以前は,文献とかを示してさえ,同じ言質を3か所の筋で取らなければ記事にはできないとかいっていたけれど,その点は記事作成規範が緩くなったということなのかもね.

minilogo.png後半はネオニコチノイドだね.1回目も農薬だったから,やっぱり農薬が悪いと書きたいんだね.でもなんかしっくり来ない記事だね.
全体としてネオニコチノイドをはっきり悪と決めるところには遠慮が見られるからかな? そのせいで文章が半端だなあ.

minilogo.pngそうじゃないよ.最初は,佐世保でミツバチが大量死したり失踪して,農薬が疑われた.つくばの研究所で調べたのは長崎のものだけではないよね.そして愛知県の稲作農家が戸惑う.日本がいくら狭いとはいえ,各地それぞれの事情を一本の線につなぐのは,B級のミステリーにしたって相当無理がある.それとも日本の農業はそんなに画一化されているわけ?
ポジティブにこの記事を理解すれば,長崎では農薬が問題と疑っている.でも研究所は,農薬だけではないかもと研究を継続している.ただ,稲作農家の心情的には戸惑いも.だから愛知・岐阜では行政が対応に乗り出した.どう?

minilogo.png忘れちゃいけないポイントはいくつもある.ミツバチからすればネオニコチノイドは怖い農薬だよ.そこにいる他の動物には影響がなさそうなのに,昆虫には劇的に効く.実際に農薬散布が行われていて,時間的なことや,巣の中の残留(特に花粉),蜂児や若い働き蜂の死亡率を調べれば,それが農薬の被害かどうかはわかる.農薬メーカーだって過去に見舞金を支払ったこともあるんだから,農薬で死ぬケースがあるのは間違いない.でもすべてが農薬だと思っていたら,怖い病気を拡大させたり,他の原因を見逃しちゃう.そんなこと人間なんだからそのでっかい頭で思いついてよ.
確かに,今年発表されたフランスでの調査でも,大量死の一部だけが農薬被害ということで,他は原因が不明だった.世界の研究者も,各地で起きていることをひとつのことと考えるのは危険と感じていて,ちゃんとした個々の原因に関しての情報集積をはかろうとしている.フランスでは,ネオニコチノイド系の農薬を部分的に使用禁止にしたのに,ミツバチの大量死がとまらず,一般農家の不満が高まってきた.国としても農薬禁止ではなく,蜜源増殖ということで養蜂家の気持ちもなだめようという政策に出てきたしね.

minilogo.png農薬被害だって騒いで,そっちばっかり見ていたら,危ないっていってんの.それはそれで原因が明らかなら,騒いでないでちゃんと対策とればいい.予防的にやれることもあるんだから.でも,ニホンミツバチさんは,もし,昔,東南アジアで流行ったサックブルード病ウイルスが入ったら,大きな打撃を受けちゃうよ.ただ,サックブルードなら見たらわかるよねえ.あんなに顕著な症状出るものねえ.でも誰も言い出さないからちがうのかなあ.
その点は難しいところだな.同じウイルスが入って来るとも限らないし,症状も,だから死に方もまったく同じではないかも知れない.この時代なら,ウイルスの遺伝子を検出できると思うけれど,そのことがすぐ流行病を見つけたことにはなるわけではないので,難しい.

minilogo.pngでも,救世主ってウイルスや農薬に負けちゃうわけ?
だから,そこは言葉の綾だってば.

minilogo.pngなんだか,救世主願望があるって世紀末っぽいね.人間には,「人智を尽くして天命を待つ」っていうカッコいい言葉があるのに,今は逆っぽい.救世主を望んでいる状況は,自分にできることは諦めて,責任を負わず,他人の努力も認めないで,ひたすら奇跡を,どこかの誰かが起こしてくれるのを待っているだけ.そんな他力本願な人間に担がれるニホンミツバチさんもかわいそうだけどさ,今,実際に頑張っているセイヨウミツバチはまったく無視なわけ? セイヨウミツバチがダメならニホンミツバチさんでいいっていいたいんだろうけど.もうダメなんだ,私たちセイヨウミツバチ.でもだれがダメにしたんだよ−!
まあまあ.実際,農水省の本予算としては初めて,ミツバチ対象の補助事業が今年度から始まった.昨年の調査研究が農水の補正予算での初めての補助事業.これまで,ミツバチといえば地方競馬とか関連収益事業からの補助金ばかりだった.いよいよ農水省も本腰というか,ミツバチもお役所からは一人前に扱ってもらえるようになったということだ.

minilogo.pngこんなぼろぼろになるまでこき使って,足腰立たなくなっているのを見て,初めて一人前扱いなんだ.もっと元気なときじゃあだめだったわけ? もう元には戻れないかもよ.第一農水省の補助事業なんて人間のためのじゃないの.
長期的展望なしに今回のミツバチの不足は予見できなかったかといえば,海外での研究は少し先行していたわけだから,必ずしも前もって打つ手がなかったというわけではないだろう.その点は研究者にも責任はあるだろうね.でもここで農水省が本気なら多少は変わっていくのかも.お金を使うのは人間かも知れないけれど,ミツバチのためになるように知恵が集まると思うよ.

minilogo.png手遅れにならないうちに,ちゃんと情報を集める努力をしようよ.メディアは情報を集めるのが得意なんでしょう? お手軽にかすめ取ったような話だけで記事を書かないで,ちゃんとミツバチにも納得がいくような記事を書いて欲しいな.そっか,部数が増えるように人間向けにはいい加減な記事を書いてもいいから,集めた情報は漏らさずミツバチに伝えてくれると嬉しい.ミツバチから研究者には情報提供をするから.
おいおい,いい加減な記事で動く人間ばかりでも困るだろう.ちゃんとお願いをしておいた方がいいと思うよ.

minilogo.pngでは,記者の皆様,適正でわかりやすい記事*を書いて下さい.私たちも取材は拒みません.沈黙はしませんから.


*原文は「ぜひ憶測ではなく,無理矢理でもない記事を書いて下さい」でしたが,それ自体が記事作成の姿勢を「憶測」している表現であったので,訂正します(2010年6月3日)




posted by みつばち at 17:37| Comment(0) | TrackBack(0) | ミツバチの気持ち by Junbee | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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