2010年05月06日

ミツバチの大量死の原因は複合的=国際獣疫事務局発表

国際獣疫事務局(OIE)が28日に,蜂群崩壊症候群の原因は複合的であるとの見解を発表しました.翌日のAFPの報道記事には,OIEの公開内容に若干の情報が付加されています.特に「もうひとつ、生垣や野生の草花がない大規模農場や市街地の拡大によりハチが栄養不足になっている疑いもある。」という部分は,定量的な評価が難しいので,見逃されがちですが,近年では複数の研究者がこの影響を強調しています.

総合的に見れば,やはり栄養不足や農薬被害などで体力が失われているミツバチに,これまでは問題とならなかったウイルスなどが有害化して影響するというのが,蜂群崩壊症候群をはじめとするミツバチの損失につながっている,ということが,ようやく共通認識になってきたということでしょう.なお,蜂群崩壊症候群の用語の,日本での事例への適用をOIEは事実上認めていますが,まだ慎重ではありたいです.世界的にも単純に蜂群損失Colony Lossという表現を使っています.

みつばち百花では,「ミツバチが減っているのはなぜ?」で,仮説段階のものも含め,こうした点を強調し,根源的には花が減っていることが大きいと訴えてきています.ミツバチにかかわる多段階の人々がいる中で,すべての人が同じ役割を負うわけではありませんから,みつばち百花としては,花が少ないことで引き起こされる諸般の問題に,花を育てる活動など,一般向けを含む多彩な活動を通じて応えようとしています.

さて,今回の発表を当のミツバチはどう考えているのか,辛口ミツバチに聞いてみました.


ようやく,大きな国際組織がミツバチの大量死の原因が複合的であると発表した.複合的ということで,対処に関しては,OIEとしては防疫と研究の強化を呼びかけているにとどまっている感じだけれど.
minilogo.png家畜化されているミツバチ自体が地球上のあらゆるところにいて,地域間で移動がある以上,防疫の必要性は高いとは思う.4月に宮崎県で発生した口蹄疫では牛豚合わせてすでに30000頭以上が殺処分対象にされている.そういう目には合いたくないな.

この口蹄疫,10年前(宮崎と北海道で計700頭余りの殺処分)に較べて被害が拡大したのは人災だという意見も多いようだね(前回は初動態勢がよかったともいわれている).今回のミツバチに関するOIEの発表にも「『無責任』な農薬の使用」という表現があって,これが,ミツバチの問題もある部分は人災的であるという雰囲気をにおわせている.
minilogo.png農薬がミツバチに影響があるのは事実.だって,そういうものとして作られているんだから.人には効かない代わりに昆虫に特異的に効くようにしたんだから.ただ,ミツバチは基本的には花を利用するので,花期に農薬を散布する必要のある作物以外では,農薬との接点は原則ないはず.ミツバチに頼る作物なら,普通は花の時期には農薬散布はしないでしょう.だから,それにもかかわらず被害が出るというのは,その誰かの「無責任」が理由で,だから人災なんだ? 誰,そいつ? 許せない.

「農薬=悪」の図式は一般にも受け入れやすいものだから,少数の,必ずしも吟味されていない証拠(と呼べるなら)で,充分に議論が尽くされているという空気ができてしまう.凄惨なほど,被害報告は,ある意味自殖するしね.それもある意味人災的だ.ただ「人災」というのはやや誤解を招きやすい言葉かな.特定の誰かが原因ということではないと思う.農薬に限って考えても,農薬を使う場面での,いろいろな仕組みが,ミツバチを守る方向で機能していないということだろう.
minilogo.pngだから,結局,ミツバチなんか守る気がないっていうんでしょう.そいつが誰かってことだよ.どうせ農薬浴びて死ぬなら,一発お見舞いしてやる.

まあまあ,いくら寿命が短いからって死に急ぐことはないよ.農業の現場においてミツバチに関係する人的資源は多段階にある.それぞれ,つまりミツバチを飼う立場からはどうすればミツバチを守れるのか,ミツバチの訪花を望む農家,作物の保護のために農薬を撒く農家,その農薬を作るメーカー,販売する企業,そうした仕組みを監督する,あるいは現場で運用する立場で,いったい何ができるかをちゃんと考える必要があって,それに基づいて行動を起こす.それが責任を負うということだろう.一般の市民だって,一端の「責任」は負うことができる.例えば,有機栽培を推進している団体で,「いたずらに農薬反対を訴えるよりも,農薬をできるだけ使わないで育てた野菜の普及が先」といった理念を示していることもある.どの立場で何をするのがよいのか,訴える先がどこなのかは,それぞれが決めればよいことだと思う.
minilogo.png一般の人向けということなら,ここ最近,ミツバチはいろいろな意味でニュースになった.最初は悪いニュースばっかりで嫌になったけどね.最近は,暗い話題ではなくても,何だか間違っているニュースが多くて,一般の人がきちんとミツバチやそれを取り巻く問題を理解できるとは思えないよ.新聞社の人,勉強して下さい!

消費者がちゃんとした理解を得られるような情報の開示は,これまたあらゆる段階で必要だろうけれど,その点は,日本ではあらゆる段階が,そのことに関しては不得意というか,どちらかというと,先に出すと不利益が大きいからと隠したがる感じは否めないな.もちろん,ブログやネットの情報の氾濫に加えて,新聞などマスメディアから内容に関してのプロ意識が欠除しがちで,情報の信頼度は全体的に低下しているのに,一般の人はそのことにあまり気がつかずに,都合のよいところだけを囓りたがる.
minilogo.png一般だけではないのでは? 今回の発表でも,花のことはAFPがどこからか加えた情報で,OIEはそのことはまったくふれていない.科学的な態度というものはこの程度なの?

自分の担当分野をきちんと全うするという考え方においては,OIEが防疫や研究の強化だけを訴えているのは正しい態度だろう.ただ,可能性の範囲として,論文も出ていることもあるし,もう少々広範な複合原因説を示してもよかったんじゃないかな.アメリカのCCD専門委員の論文でも,栄養改善と衛生改善が最大の予防策と言い切ってたから,栄養不足はある程度,研究者の間での理解のための共通材料になっていたとは思うけれどね.
minilogo.pngその論文はとても気になった.動物飼育では,栄養と衛生は最大の要でしょう? もともとミツバチという生物自身が,その二点に関しては独自に発達させた仕組みを持っているから,こんなに長くやってこれた.人間に飼われるようになってから発生しているんだよ,多くの問題が.その点もわかっていて,人間が責任ある態度で臨んで欲しい.

それはもちろん,その通りだろう.動物を飼育するという立場は,確かに動物に対して責任を負うということだ.ただ,技術的には確立されていたものが,徐々に現状に合わなくなるということはあり得る.状況の方の変化が大きいからね.環境の変化,温暖化もそうかも知れないが,やはり植生の変化はミツバチには栄養面での影響が大きいだろうし,土地の利用性の変化で以前とは異なる状況が到来してしまう.農薬被害の大きい,東北・北海道は,今や日本の米所だけれど,昔,社会科では冷害もあって稲作には不向きと習ったよ(古すぎるか?).当然,農家はいろいろな状況に応じて作物を転換するし,それによって地域の経済も変動するから,土地利用の全体像は大きく変わる.ミツバチを飼うことで成り立つ養蜂産業にとって,この変化にきちんとついていけているかどうかが,実はけっこう重要なポイントなんだろうと思う.その理解がなければ,やはりミツバチを飼うという点での責任は負い切れていないといわれても仕方ないだろう.
minilogo.pngミツバチは花があれば何とかそれを利用して,自分たちのあるべき姿を模索する(飼われていれば,その先には養蜂家が望む「生産」っていう部分がついてくるわけだけど).でも,普段は見向きもしない花を利用しなければならない状況や,農薬が散布された花に行かなければならない状況が強いられることで,私たちはかなり苦しめられている.そのことにはなかなか気がついてもらえない.予防原則で農薬反対を訴えるなら,目の前の農薬被害をちゃんと予防してよ.

農薬被害も,花が少なくなっていることのひとつの表出形だとは思っているけれど,具体的に花が少なくなっているという報告や,それと農薬害との関係を示唆する研究報告も見かけない.農薬のスタイル(散布形態や剤形)の変化によっても,散布された花の危険度が変わってきているのは間違いないだろう.でも,この部分は被害のメカニズムの科学的解析が公表されていないので,いろいろな報告から推論するしかないが.
minilogo.png人間は科学的にとか客観的にとかいう言葉をよく使うけれど,情報に関してはお互い出し惜しみで,総合的に考えるのは下手だよね.自分の情報だけが正しいと思っている(正しければ客観的だと思うみたいだし,それ順序,逆でしょう?).そして,他者の情報には懐疑的か否定的.あれでどうやって適正に総合的判断をするのかな? そもそも生き物には,科学以前に生きているという事実がある.存在こそがすべてだから,存在するものはすべて総合的に判断材料にするよ.人間にはどうしてそれができないのかな?

人間は,ミツバチの働き蜂の分業のように,ひとりひとりが,他のことは他人に任せきって,自分の仕事に埋没することもできないし,群れという存在として,全体の方向性をひとつと信じ続けるのも不得意なんだろうね.波と同じで,盛り上がればすぐに下がっていく....でも,いくつかの流れを作ることはできるし,それぞれが客観的で科学性を確保できれば,その集合体としては,きちんとした成果も出せているとは思うよ.みつばち百花もその点では,ミツバチのことをきちんと考えている.
minilogo.pngそれは信じてもいい.ただ,ミツバチのことを考えてくれるのは嬉しいけれど,ミツバチのことだけを考えているというのはかえって怪しい.ミツバチと一緒にいて幸せな自分をちゃんとイメージできているかなあ? 守りたいものが「自分」でなければ,それは生き物として嘘だよ.

さて,結局,今回の発表はどういうインパクトがあるだろう.人間の側では,監督する国際機関がお墨付きを出したことや,今後の研究に関して言及したことで,研究の方向性にはある程度影響が出そうかなというところだけれど.
minilogo.pngどうかなあ.何かが変わるとは思いにくいな.監督しているからこそ何かを表明しなければ,みたいな雰囲気もあるし.防疫だって,現場ではそれなりにやっているんだし,研究だって,そうでなくても進められるのでは? 口蹄疫の陰であまり報道されていないみたい(口蹄疫自体があまり報道されてないように思うけど,大丈夫なの?)だから,何ともいえないけれど,ミツバチを取り巻く状況が厳しい中で,でもミツバチには頼っているってことを,もっと一般の消費者にも知って欲しいし,知ったら知ったで,何かアクションを起こして欲しいな.そういう人間とは共存できるような気がするし,そういう人のためなら,多少のことは我慢して,畑の花にも通ってあげるよ.






posted by みつばち at 12:13| Comment(0) | TrackBack(0) | ミツバチの気持ち by Junbee | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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