2010年04月13日

続・鹿島のニホンミツバチプロジェクトっていったい...

前回の続きですが,こうした取り組みを意味のあるものにするために,少しは前向きな提案をしておきたいです.
実は前回取り上げた,鹿島のKajima CSR Reportのニホンミツバチプロジェクトの記述の最後には「鹿島ではコゲラやシジュウカラといった野鳥の生息可能性を指標にした緑地の評価技術も開発している」とあります.この種の研究はある意味でやりやすいという側面があるのでしょう,いろいろなレベルで行われています.日本造園学会が刊行している学会誌「ランドスケープ研究」にも大阪府立大の研究者による「樹木面積率の異なる都市緑地におけるシジュウカラの繁殖成功の比較」(井上・夏原,2006)のような報告があります(本文は日本語で,全文J-Stageからダウンロードして読むことができます).
鹿島のいう「生息可能性」という概念には,当然この論文でも調査している「繁殖」が前提です.コゲラやシジュウカラは,人間が用意した巣箱を利用して,環境がよければ繁殖して増えることも可能です.その環境を人間が改変して,よくしていけば繁殖成功率は上昇するかも知れないわけです(どこかでもちろん頭打ちにはなるでしょうが).都市環境をよくしたいという場面で,環境を評価する指標として,こうした野鳥(の生態)を利用することには一定の有効性が認められるでしょう.
それができているならなぜミツバチではこんなひどいことを? とは辛口ミツバチ.今回も一緒に考えてみたいです.


minilogo.png野鳥は繁殖できるかどうかが問題で,ミツバチはハチミツが採れるかどうかでいい,というのが気に入らない.ミツバチが何のためにハチミツを集めるのか,ぜんぜん理解されていない.そのハチミツを採って,子供に食べさせて,そのせいでそのミツバチが冬を越せずに死んでしまったら,子供たちになんて言い訳するつもり? 
いきなりそこをついてきたか.その言い訳は難しいな.みんなで食べちゃったから死んでしまったんだと正直に伝えたら子供は傷つくだろうね.でもだからこそ大切なハチミツなんだといういい方はできるかも.ただ,ミツバチの命を犠牲にしてまで学ぶことではないし,ハチミツのありがたさを伝える方法は他にもあると思うよ.

minilogo.pngミツバチは,人間に近いところで繁殖を成功させるために,ある程度の仲間が犠牲になることは厭わない.人間の側にも割り切りがあって,こちらにも割り切りがあるならそれでいい.でも,教育という場面で,ハチミツが採れたからよい環境というのは,ミツバチという生き物をあまりに軽んじていると思う.ミツバチが繁殖できるかどうかもきちんと含めて議論して欲しい.今のやり方だと,花があってミツバチがいればハチミツが採れてよかったねで終わってしまう.こういうプロジェクトでは,ニホンミツバチでもセイヨウミツバチでも同じだけど,ミツバチはプロジェクトの中で生き物として考えてもらえていない.花の蜜を集めて,ハチミツにする便利な機械か何かだと思われているみたいで嫌だな.
う〜ん,そこまで生き物に対して無理解な人ばかりではないと思うけれど,「ミツバチ=ハチミツ」という短絡的な図式に束縛されている人は多いと思う.人間がミツバチを飼う目的は,本来的にはハチミツ生産だからね.ハチミツが生産できたことが,結果になってしまって,それ以上のものが見えない.

minilogo.pngでも,その生産のためにはミツバチが持続的に生きていかなきゃならないわけでしょう? まあ,次々とミツバチを入れ替えればいいと思っているんだろうけど,それでは生き物を通じて環境を知ることにはならない.昔の養蜂みたいにミツバチは秋に殺される運命,その時代に逆戻りしている.でも,それがあたりまえだった分,その時代の方がまだよかったかも知れない.
まあまあ.近代的な養蜂は,採蜜に伴うミツバチの負担を軽減したし,日本もそうだけど,寒冷地でも越冬が前提となる養蜂は確立している.生産養蜂家は,もちろんある程度の犠牲を要求はしているけれど,基本的にはミツバチを大切に思っていると信じているけれど.

minilogo.pngそれを実感できる場面はもちろんある.いい養蜂家は多い.だってミツバチがいなければ成り立たないのが養蜂なんだから.この養蜂家のところで飼われたいと思うような養蜂家はたくさんいるし,そこに飼われていれば,仲間からうらやましがられるほど愛情を注いでもらえることもある.でも,都市でミツバチを飼う人たちは,最初はミツバチを大歓迎してくれるのに,実はあんまりミツバチを愛してくれていないというのが実感.
それは,単純にミツバチを知らないということだと思う.技術的なものだけではなくて,ミツバチが本当はどんな生き物で,その時々でどうしたいのかが理解できていないから.刺されるのは怖いし,今,どんな調子なのか? 気分はどうなのか? どうやったらそれを聞き出せるのか,気むずかしい相手に接している気分なんだと思う.

ちょっと話をもとに戻そう.実際に都市部でどんなことをすればミツバチを使って生物多様性や環境教育を実践できるだろう.今日のテーマはそこにしたいんだけど.

minilogo.pngニホンミツバチさんは,場所にもよるけど都市部でもうまく生活している.セイヨウミツバチよりも群れが小さいし,越冬が上手だから,大量の貯蜜がなくても冬を越せる.都市部は気温も高いから,越冬には向いている.天敵もいないし,競合相手も少ない.でも,どのくらい生息しているかは,前回の駆除件数データのようなものしかない.海外では野生のミツバチの分布密度を環境の指標として利用できるという研究もある.ニホンミツバチの分布はヨーロッパやアメリカでの結果と比較すれば,東京や名古屋がどういう位置づけか,わかるかも知れない.
確かに日本の都市部では人口密度も高いから,野生群の巣も誰かには見つかっている可能性がある.通報されて駆除されてしまえばそれだけど,地域でその大切さを理解できれば,駆除をせず,生息したままでの分布調査は可能だろうね.

minilogo.png環境の善し悪しと分布密度がどういう関係になるのかはそれほど単純なものではないから,もっと多面的なデータが必要かも知れない.ただ,ミツバチがどの程度の採餌範囲を必要とするのかは,当然その場所の資源の量と質に依存するし(いつでも2kmってわけじゃあないんだ),そうした側面も調べてみればいい.どこに行ってるのか,どの花だったのかはちゃんと聞いてくれれば答えてあげる(ニホンミツバチさんはそのあたりはちょっと秘密主義だけど).
家屋への営巣は駆除の対象となりがちだし,人間の通行の邪魔にならないところに,ミツバチの野生群用の巣箱を置いて,住んでもらうというのはどうだろう.こうした巣箱をあちこちに設置して,その利用率から,その地域の環境をおおざっぱに把握することはできそうだね.

minilogo.pngついでに花でも植えてくれて,その効果を知りたいということなら教えてあげられる.こうした部分がうまくいけば,ニホンミツバチさんだってハチミツを提供できるかも知れないし,そうすれば人間の側でも,もっといろいろな情報を入手できるはず.現状がわからないのに,いきなり成果が出るわけはない.企業さんだと時間的な制約があるのかも知れないけれど,むだな1年は,有益な2年の半分の価値もない.そんなことはミツバチだって知っているのに.
確かにハチミツが得られれば,そこからはいろいろな情報が集まるね.そうしたものを解析していけば,人間の関与した環境が,どうミツバチに利用されているかはわかりやすい.こうしたデータがあれば環境教育もやりやすくなる.

minilogo.png環境教育が何を目指すのかはミツバチにはわかりにくい.人間が言う環境という言葉がいまいちなんだよね.多くの人は都市で環境というと「緑」だと思いたがる.でもそれほど簡単なものではない.生物多様性を意識するなら,植物以外の生物も勘案しなければならないし,都市部では一番数が多い(インパクトが大きい)人間活動も含めなければ.でも,だからやる価値があるということでしょう.教育は人間がやることだから,生き物を意識した環境作りを目指すということでいいのかな? そういう場面で,生き物が生きている意味をもう一度ちゃんと理解して欲しい.科学的にというよりも,同じ生き物として.
それはよくわかる.教育の素材は,もちろんフィクションもあるし,科学に基づいたものもある.ただ,環境を考えるときに,物語の中に登場するクマやミツバチと同列のとらえ方ではダメ.その点ではやっぱり科学性は確保したい.鹿島の取り組みは,数少ないという点では注目されるだろうけれど,COP10でこれが日本の取り組みということで紹介されたら,やっぱりちょっと恥ずかしい.都市を造るという気概のある企業なんだから,科学性をきちんと確保して,ちゃんとした理論を身にまとっては欲しいね.
minilogo.pngそのためならミツバチも協力できる.社会ということでは,ミツバチの方が長い経験がある.学べるものならきちんと学んで欲しいし,ミツバチについてももっと理解して欲しいな.




posted by みつばち at 12:13| Comment(0) | TrackBack(0) | ミツバチの気持ち by Junbee | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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