2010年03月30日

イチゴハウスのミツバチからのお願い

矢祭のイチゴ農家の訪問で思いがけずよい状態のミツバチを見ましたが,養蜂家も農家も,あるいは試験場なども,ある一定の条件下では,秋にハウスに導入したミツバチが春に充分使用に耐える状態で屋外に出せるということを経験しています.反面,多くの蜂群は使い捨てで,使用終了時点では数百匹以下になってしまう,あるいは死滅していることが多いのですが...

共通している点,あるいは工夫点は次のようなものです.
蜂量:約10000匹(巣板4枚分弱),巣板は貯蜜巣板を3枚と蜂児巣板を2枚の5枚構成.蜂児量はおよそ6000匹程度です.蜂量はこれより多くても難しいです.
巣箱:通常の運搬箱を用いています(板厚が薄い場合には断熱材などで覆うとよいと思います).
イチゴの品種:多花性で,花期が間欠的になりにくいものがよいです.
給餌:砂糖水の給餌は避け,持たせた貯蜜で春まで維持します.不足した場合は,貯蜜枠を与えるのがよいでしょう.花期に間隔が空く場合には代用花粉を与えるなどの工夫が必要です.
巣箱の設置:ハウス内で50cm程度の台の上に乗せます(作業者や台車などがぶつかりにくい場所を選びます).

実際のところを,ミツバチに聞いてみました.


minilogo.pngミツバチは安定的に女王蜂が産卵している状態で,花があって活動している時期なら,働き蜂の数と蜂児量はおおよそ3:2になっている.10000匹の蜂群が安定的に維持されるなら,蜂児は6〜7000匹必要で,これを支える女王蜂の産卵能力は300個/日.8000匹の蜂群だと250個/日の産卵が維持できれば蜂群自体を維持可能.そのためには女王蜂には卵の材料として毎日50〜60mgのローヤルゼリーを与えなきゃいけない.イチゴの花粉が栄養価が高いとしても大きな花粉団子数個分は必要.でもイチゴは花粉が少ない.そのために,まるで受粉をしたがっているかのように見えるだろうけれど,花の上をぐるりと回って花粉を集めなきゃなんない.けっこういくつかの花に行ったつもりでも,せいぜいこの程度の花粉団子しか作れない.
PL-ichigo-s.jpg


minilogo.pngでもハウスの中のイチゴの状態がよければ,春までの存続は不可能ではない範囲.花が途切れちゃうと,かなり厳しいけれど.そんなときに,ハウスの中にナタネの花を入れてくれたり,きな粉をハチミツで練った代用花粉を少しずつ,巣箱に入れてくれたりするだけでもかなり救われる(代用花粉はやり過ぎると必要以上に卵が生まれて,蜂群維持は難しくなってしまう).

minilogo.pngミツバチがハチミツだけで生きているという誤解は根強くて,どうしても活動が低下したときに砂糖水を食べさせられる.でも,砂糖水はいったん巣房に貯めなきゃ利用できないし,そのために濃縮も必要となるから,けっこうエネルギーを必要として,疲れてしまう.最初に充分な貯蜜を入れてもらっておくのが一番.足りないという事態は,本当は避けたいところだけれど,本当に不足したら,一番いいのは貯蜜巣板を入れ替えてもらうこと.ハチミツを与えればいいだろう? そう思うならばほんの少しずつにして.大量に与えられればその仕事をこなすためにイチゴへの訪花は二の次になるから.

minilogo.png巣の保温については意見が分かれるところだけれど,ミツバチとしては板厚の薄い巣箱では,気温の変動の大きなイチゴハウスでは巣の温度を安定的に維持しにくい.特に夜温が下がる場合には,発熱のために体力の消耗と貯蜜の消費が進んでしまう.そのためにも断熱材などで保護してもらえればいい.ただ,保温の状態がよすぎると,女王蜂の活動範囲が広がって,蜂児圏が広がりすぎることもあるので工夫は必要(垂直隔王板を使うとか).これはミツバチの方でうまくコントロールできないことが多い(セイヨウミツバチの性なんで,申し訳ないけれど).それから,移動用の巣箱だと換気窓があって,暑いだろうからとここを開ける人がいる.これは大きなお世話,やりたいように換気させて.暑いのも苦手だけど,冷えるのはもっと苦手なんだ.換気量をきちんと調節して,温度も維持しながら,不要な湿気と炭酸ガスを外に逃がしているんで,その計算が難しくなるようなことはやめて欲しい.

minilogo.png春になると温度の上昇を防ぐためにハウスの天窓を開ける.ここから飛び出した働き蜂が戻らないとか,あるいは秋の導入直後や,花が少ない時期には働き蜂の消耗が激しい.もちろんそれを補うために蜂児がきちんと育っていれば,働き蜂が減ることの影響はそんなに長くは続かない.蜂群としては,ハウスの中でも長期間生きてはいける.

minilogo.pngミツバチはイチゴを人間のために作ってあげようとは思っていないよ.でも,イチゴの花はミツバチを待っているし,ミツバチの使命として,イチゴの受粉はしたくなる(本能だからね),で,代わりに花粉はもらう(花蜜は大したことないけど).ハウスはミツバチにとってかなり厳しい環境だけれど,それでもミツバチは自分の社会を維持させることをあのハウスの中でも夢見ている.養蜂家や農家がちょっとミツバチに注いでくれる愛情に救われている事例はたくさんある.春まで生き延びようと思っているミツバチたちに,農家の人たちがこうしたヒントの中からよさそうなものを選んでくれるといいな.イチゴをたくさん作るためと思ってくれるのでもいい.イチゴをたくさん作るのは「元気な」ミツバチなんだから.その点では同じ目的に向かっていると思えるよ.おいしいイチゴをたくさん作りたいという気持ちが,ミツバチにとっても大切なことなんだ.

posted by みつばち at 10:01| Comment(0) | TrackBack(0) | ミツバチの気持ち by Junbee | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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