三重県松阪駅から車で20分ほどのところに4ヘクタールにもおよぶ蜜源畑が出現しました。
訪問したのは、1月半ばの小雪がちらつく日で、畑に吹き抜ける風が冷たかった〜。
植えられているのはシソ科のカラミンサです。
この広大な畑で蜜源増殖に取り組んでいるのは、県内で4代にわたって養蜂業を行っている養蜂家の水谷俊介さんと、大規模農家の小林農産社長の小林秀行さんです。
養蜂家の水谷さん。
農家の小林さん。
養蜂家と大規模農家がタッグを組んで取り組む蜜源増殖は前代未聞のこと。
さて、それぞれにどんな取り組む「理由」があるのでしょう?
水谷さんによると、三重には1200箱以上を持つ大規模養蜂家が8人いるだけなんだとか。個人養蜂家はあまりいないそうです。
養蜂家さんたちは、春になると秋田や長野にミツバチを連れて出かけていく。なぜなら、このあたりには春の一時期が過ぎれば、蜜源がなくなってしまうから。
花がない?
ビルが林立する都会でもないのに?
と不思議に思い、周囲を見回してみると…。
畑の周囲は見慣れたロードサイドの風景が続きます。ときおり神社の杜のようなこんもりした緑地帯が垣間見えるけれど、確かに花はなさそう。あっても樹木が中心だから、花期は短い。
山は、やはり杉だらけだそうです。そして、耕作放棄地は広がるばかり…。畑の作物は花を咲かせないし…。
やはり花はなさそうですね。
水谷さんは、地元で農地を生かした養蜂ができれば、養蜂を新たな魅力をもった業種として継承していけると考え、三重発の新しいハチミツづくりをしたいという熱い思いでこのプロジェクトを立ち上げました。
でも、売るほどの量のハチミツを得るためには、大量の花、すなわち大規模な蜜源地帯が必要です。
そこで友人で大規模農家の小林さんに協力を呼びかけました。
農業者の小林さんの目から見た蜜源増殖の話は、農地からハチミツという新しい「農産物」を得るという新鮮な発想だったそうです。
農業は、度重なる天候不順で不安定なうえに、経済のグローバル化の大波にさらされています。そして、少子高齢化…農業をあきらめる人も多く、耕作放棄地は増える一方…。
もし、ハチミツという新しい生産物を得られるなら、面白いかも!!
というわけでお二人は、可能性にかけてみることにしたそうです。
ただ、なにを植えればよいのかわからない。
・条件は、栽培に手間がかからないこと
広大な畑だから、手間をたくさんかけることは不可能
・ミツバチのために農薬を使用しないために、大規模で栽培しても病気になったり、昆虫の食害がないこと
・花期が長いこと
・高温多湿なのに乾燥もしてしまう日本の夏に強いこと
・できれば1年草ではなく多年草
そして、なによりもミツバチが大好きな花であること
昨年から始まった農水省の蜜源増殖事業を受託できたものの、なにを植えるべきか悩んで、昨年の初秋ごろにみつばち百花にご相談がありました。
そこで私たちは、シソ科のカラミンサを提案してみました。
くにたち蜜源ガーデンで栽培した蜜源植物のうち、「この花、こんなに人気だったのね」と発見したものがいくつかあります。
カラミンサもその一つです。カラミントとも言われています。
シソ科のハーブの一種です。
小さな薄紫がかった花をスズナリに咲かせる地味〜なハーブです。
花が満開のときには、ミントの香りがふわーっと漂い、ミツバチの羽音がぶんぶん聞こえます。
↑これは満開のとき。6月下旬ごろから11月半ばぐらいまで、ずっとこんな感じで咲き続けます。
ミツバチは、とても忙しそうに花から花へ飛び回ります。
病気にならないし、食害もなし。手間は晩秋に刈り込むぐらい。多年草で株はどんどん大きく成長していく…。
上記の条件に合うとしたら、カラミンサかも。
が、今までハチミツなんて出会ったことがない…。
まあ、大規模にカラミンサだけ植えるなんてことはありえないですもんね。
やってみるしかない!
というわけで、昨年の秋、水谷さんたちはカラミンサを4ヘクタールの畑に植えてみることになりました。
しっかりマルチがしてあって、整然と並ぶカラミンサたち。
さすが大規模農家の小林さん!見事なカラミンサ畑が出現しました。
ローズマリーも一部に植えてあります。
補助金の下りる時期の関係で、晩夏にカラミンサの苗を探したところ、季節はずれでほとんどなく、おまけにそんなにまだ知られていないハーブのため、苗がない!状態に。そこで種を買って、自分たちで苗を育てるハメに…お疲れさまですm(_ _)m
でも、これもずらーっと苗が並びお見事です!
蜜源増殖が成功して、ハチミツが採れたら、水谷さんが小林さんたちに養蜂を教え、小林さんから水谷さんがハチミツを購入して、販売を手掛けるというような関係にしていくそうです。どのくらいのハチミツが採れたら、採算が合うのかはまだわからないとのこと。
カラミンサのハチミツ、採れてほしい!
結果が出るのは、8月ごろ。
とっても楽しみです。
耕作放棄地は、まだまだ増えるので、ほかにもいろいろ提案してほしいとのこと。
新たな候補も浮上中。
春が近づき、ドキドキワクワクの百花です。