2014年02月26日

Money for Bee Food(ミツバチの食べ物のためにお金を!)

アメリカ農務省が,花粉媒介昆虫の健康改善を目指す支援策として,中西部5州の農家対象に300万ドル(約3億円)の支援をするそうです.アメリカの食糧政策の将来はミツバチに大きく依存しているという認識のもと,他のミツバチ支援策(疾病対策等々)と併行した,養蜂家を助け,ミツバチの損失や不足を回避しようという一連の事業の最新の施策です.で,具体的に何をやるかというと,ミツバチの食べ物になる花蜜と花粉を供給できるように,また同時に環境の改善にもつながるように,植生の保全を行っていくようです.みつばち百花って,まさにそんなこと考えてる団体ですから,いよいよアメリカも追いついてきたってことかな.

minilogo.png何言っているの.これはアメリカの話でしょ.2006年以前は,越冬中の蜂群の損失が10〜15%だったのに,それ以降は30%にもなっちゃって,養蜂家がミツバチを失って困っているから,いろいろ手をこまねいてきた.でも養蜂家が失うっていうのは,私たちが死んでるってことでしょ?
えっと,もちろん,そういうことだと思うよ.

minilogo.pngそれで,安全で多様な資源を用意しましょうと,養蜂家を助けるために,周囲の農家にお金を出して支援するんだね.なんでミツバチにお金を出さないの?
あんたたちはお金使えないでしょ.代わりに,ミツバチが利用できる蜜源や花粉源を保全してもらおうという取り組みのようだよ.例えば,放牧地や牧草地の牧草類を,土壌流出を防いで,かつ地力も高まり,侵略的な植物を寄せ付けないようなものにしていくと,結果的にはミツバチにとっての良質な資源となるし,あるいは野生のハナバチたち,さらには野生動物たちの生息地にもなっていくという流れを描いているらしい.

minilogo.pngふ〜ん.アメリカじゃ,放牧地に野生動物がいてもいいのか.で,ミツバチはそこで一生懸命,花に通って,養蜂家にハチミツを提供するんだね.この5州に,夏は全米の65%ものミツバチたちが集まっているんだ,さぞかしハチミツの生産量も上がるだろうね.
いや,越冬のための体力をここでつけてもらいましょうという狙いらしいよ.だから,さまざまな景観の中で,多様かつ大量の資源をミツバチに提供できるような取り組みを,農家や牧場主を支援しながら進めていくようだね.

minilogo.png主要5州で3億円? アメリカにしては少なくない? 日本だったら北海道でそのくらいあればいい支援になる?
もちろん資金額に応じたことはできるだろう.ただ,北海道だけでいいかどうかは難しい.先般見てきた沖縄県なんかは,交配用ミツバチの生産基地として,養蜂産業が急速に伸びているけれど,従事者はまだ経験の浅い人が多いし,島で土地の面積が多いわけではないのに,急激に蜂群数が増えたから,採蜜成績は急激に下がっている.沖縄県でミツバチを飼っていて,かつてない,いろいろな問題を突然抱え込んでるのが現状なんだ.そういうところへの手厚い支援は不可欠だと思う.この支援策に見習うなら,支援対象の地域が,ミツバチや養蜂にとってどういう位置づけにあるかに基づいて,何をすべきか考えるという点かな.あと,もう一つは,単純にミツバチだけを支援する方向性ではないことが大きく評価できるね.

minilogo.png何でよ,ミツバチに頼っているくせに,それじゃいけないの?
土壌の流出防止とか地力回復とか,土地を提供する農家や牧場主にとってメリットがある部分が,本当はもっと理解されるべきだよ.確かに,ハチミツ生産だけじゃなく,交配を通じた食糧生産の上でも養蜂産業は重要だけれど,農業の一セクターだけに焦点を当てて支援するより,できるだけ多くの人を巻き込んだ方が,よりミツバチのありがたみが普及するだろうからね.何でミツバチだけ特別待遇なのと思われるよりも,関係するみんながいい思いをすることには意味があるんじゃないかな.

minilogo.pngそうなのかなあ.確かに,養蜂家だけじゃなくて,いろんな人がミツバチのことを少しでも考えてくれるなら,その方がいいのかなあ.ミツバチのために何かを,っていうんじゃなくて,自分たちのためにしたことが,同時にミツバチのためにもなっているというのが,ちょうどいい距離感なのかもしれないなあ.


越冬前のミツバチに,栄養価の高い資源を利用させようというのは,まだ少し短直的な感じはしますが,蜂群崩壊症候群の原因探求が結論を見ないままという状況で,具体的に損失を防ぐ施策へと動き始めたことは評価に値すると思います.また,支援される農家や牧場主たちは,土壌流出の防止や地力回復という,本来の自分たちの利益につながる部分で,あるいは国家的には環境という場面での問題解決策という意味も持たせて,こうした事業を実施できることになります.その結果として,ミツバチと養蜂産業が,その生活基板として利用できる資源を得られるというのはよい方向性でしょう.ミツバチが利用する資源環境を,私たちにとっての生活や生産の環境だととらえ直す試みとしても,今後の動きを注目していきたいです.
posted by みつばち at 16:24| Comment(0) | TrackBack(0) | みつばち百花プロジェクト | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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