紹介するのは,川上洋一さんという自然科学ライターが書いた「東京 消える生き物 増える生き物」 (メディアファクトリー新書)という本.都市で増えた減ったと人間が騒ぐ生き物を取り上げて,都市に自然がよみがえってるとのありがちな「錯覚」を打ち砕く,データに基づいて検証的に書かれた,とてもわかりやすい1冊.でも,著者でもありすべてのイラストも描いている川上さんは,決して都市や都市の自然環境に批判的っていうことではなく,都市でも人間と自然が共存できる日が来ると信じておられる.ただ,現状で,あまり騒ぎすぎなさんなよというのがスタンスのようだね.

わかりやすい表現で書かれているのは,都心でキツツキ(コゲラ)が増えている理由について書かれたところかな.23区内の街路樹が老齢化して,枯れ枝が増え,そこにカミキリムシなどが多いので,コゲラはそれを狙って都市部で増えてきているらしい.川上さんは,「『キツツキが棲む豊かな自然には枯れ枝が多い』という法則は成り立つが,『枯れ枝が多くキツツキが棲んでいるので自然が豊か』とは言い切れない」と断じているんだ,これが,特定の生き物の増加を根拠とする都市の自然再生ロジックの間違いだって.

そうだね.感覚的な方が,検証という過程に曝されないので,広がりやすいんだろうねえ.情報の広がり方としてゆゆしき問題だとは思うけど.

そうなんだよね.カワセミは「それこそイメージで,すわ都市の自然再生かと誤解された鳥」で,その美しさゆえに見るものを魅了しちゃう.川上さんは「清流の鳥というかつての偏った看板はそろそろ外した方がいい」といっている.

野生のニホンミツバチは都市部でも増えている.都心にミツバチを置いているとたくさんハチミツが採れる.だから,ミツバチが住む都市は,自然環境が豊かになりつつあるのだという考え方はけっこう定着しているとは思っているよ.

その点では,自然が再生されているという人と,そうではなく都市環境というものがそもそも豊かなんだという考えをする人たちがいるのも事実だと思う.

しかも君たちは,人間が作ったものにも巣を作るし,行動半径はそこそこ広いから食べ物不足には陥らない.

待ちなよ.生き物である以上,他の生き物との関係,それが自分に不利な場面があっても,そうした生物間関係が多様に維持されていることが長期的には大切だってわかっているんだろう.

おいおい,そうやってすでに人間をたぶらかしてきたんだろう.都市養蜂の人たちは君たちの魔性の虜になっているのかも知れないぞ.でも,カワセミみたいに,間違った看板は外すときが来てると思うよ.悪霊退散!

しばらく興奮冷めやらないようなので,今日はこの辺で...ほとぼりが冷めた頃にまた....