2010年07月30日

「農薬とミツバチ」問題を考えるということ

ミツバチ上科の蜂類の研究を扱う国際的な学術雑誌Apidologie(ミツバチ学)で「ミツバチの健康」特集が出ました.今年,Journal of Apicultural Research(養蜂学研究雑誌)での「ミツバチの蜂群損失」特集,Journal of Invertebrate Pathology(無脊椎動物病理学雑誌)での「ミツバチの疾病」特集に続く第三弾.いずれも近年のミツバチの損失に関しての研究者の関心の高さをよく表しています.各特集の紹介は後日然るべきところで行いますが,今回の特集の中に,ネブラスカ大とペンシルバニア州立大の研究者の共著による「アメリカにおける農薬とミツバチへの毒性」という論文があります.このタイトルでカバーされる範囲は広く,日本で関心を集める部分だけではどうやら語り尽くせそうにありません.いつものように,辛口ミツバチと一緒に概観してみます.

minilogo.pngこの人たちは1985年までとそれ以降で農薬とミツバチの関係が変わったといっている.どうしてかな?
1985年までは,外勤蜂が巣の外で,果樹などの作物に散布された農薬に暴露するというのが,農薬問題の基本だった.それがダニの被害が深刻になるにつれて,殺ダニ剤が巣箱内で多用されるようになった.また耕作地では,植物自体が殺虫成分を作る遺伝子を導入されたGE(遺伝子工学的な)作物の栽培面積が増えた.さらに,これまでにはなかった浸透性の農薬が使われるようになった.ミツバチを取り巻く農薬はその頃を境に大きく変遷したということだろう.

minilogo.png農薬によるミツバチの被害は古い問題でもあるんだね.
アメリカでの1966〜1979年の蜂群の損失の大半は,有機塩素系,カルバメート系,有機リン系,ピレスロイド系農薬による被害だという.花期の散布を制限したことで,一定の被害減少にはつながったみたいだけど,長期的な残効性による被害に関しては,まだわからない部分が多いそうだ.

minilogo.png日本では最大(?)の関心事になってるネオニコチノイドはアメリカではどう位置づけられているのかな?
現在,よく普及しているネオニコチノイド系とフェニルピラゾール系の農薬は,これまでの農薬と違って「浸透性」というのが売りで,植物体内に浸透して,植物の内部を食害する害虫に効果を発揮する.葉や茎の中に潜り込むような害虫には外から農薬をかけても効果が出ないけれど,これなら有効なので,多数の作物で利用されている.
こうした薬剤利用が増えることで,直接暴露によるミツバチの被害は減るという一面はある.一方で,花粉や花蜜中に長期的に現れる薬剤による影響は起こり得る.これが,どこで釣り合うかという問題という位置づけらしい.


minilogo.pngつまり被害の方が大きいということかな.この人たちもネオニコチノイドと蜂群崩壊症候群CCDとの関係に言及しているよね? ミツバチに対する毒性が高いから?
急性毒性が高いということでならこれまでの農薬ととりわけ区別して考える必然性はないかもね.ただ,単一投与の急性毒性よりも,低濃度での長期的な暴露の方が影響が大きいという報告が多く,さらに,そうした状態だと,例えばノゼマのような病原の影響が強く出るようだ.こうした影響はまだ研究段階で,もっとデータがないとはっきりしたことはわからない.ただ,慢性的な毒性は,寿命の短い(失礼!)ミツバチでどこまで大きな影響かはわからないな.

minilogo.pngはっきりしないなあ.結局,ネオニコチノイドは危険だと思うべきなのかな?
特定の昆虫に対する特異性はないから,その意味で,今までの農薬と同じように危険ということ.加えて,アメリカでは種子消毒や土壌消毒の目的での使用が中心らしいので,浸透性による長期的効果に関心が行きやすいようだね.日本では,散布による影響の方が表面化しているので,事情が違うかなという印象だ.いずれにしても,ミツバチの立場からすれば,危険だと思うしかないだろう.その点では新しい情報ではないかもね.

minilogo.pngそうかも知れない.で,「農薬問題」は普通はここまでで終わりだけど,この論文はそれだけではないんだね.殺虫成分を作る遺伝子を導入した作物も取り上げられている.これも以前,結構,問題視されていたよね?
著者は遺伝子導入作物はミツバチには有益という言い方をしている.というのは,こうした作物に導入されている毒性は,もともとは細菌の生成するタンパク質によるもので,これが消化管内でチョウ目やコウチュウ目など標的昆虫の受容器と結合して初めて効果が現れる.ハチ目のミツバチでは受容器が異なるし,幼虫の成育に影響がないことも多数の研究によって確かめられている.
同時に,こうした作物では,圃場での殺虫剤の散布は限定的になるので,ミツバチが影響を受ける確率はごく小さくなる.その点ではミツバチにとってはいいことづくめともいえるかも.
日本では遺伝子導入作物の栽培には,一方的な懐疑感や嫌悪感が先行しているけれど,ミツバチとの関係で見れば,もう少々,少なくとも研究開発には理解が欲しいなあ.


minilogo.png人間は難しいんだね.ミツバチは遺伝子導入作物だって,利用できるものなら分け隔てなく利用するけどね.
それより,これが問題かも.巣箱の中で使う薬剤も問題なの?ダニの薬は私たちミツバチにとってはありがたい存在だと思っていたけど,本当はそうではないのかな?

日本でも,そして世界的にも広く使われているフルバリネートはピレスロイド系の化学物質,アメリカではこれ以外にも有機リン系のクマフォスが利用されている.これらは巣のろうに吸着して長期残留する.以前から生産物(蜂ろう)の汚染だけではなく,ダニが低濃度の薬剤に晒されるうちに耐性を獲得する可能性が指摘されてきた.この論文では,この蓄積性ゆえにミツバチ自身への影響もあるとしている.アメリカではフルバリネートが204ppmで巣に残留していたという報告もあるからね.それではミツバチにも影響が出ちゃうだろう.

minilogo.pngそんなに高濃度で残留するなんて.ダニ剤も殺虫剤と同じグループなんだね.水溶性が低いからハチミツに移行しにくくて,こうした問題が表面化しにくいのかな.それにしてもミツバチにも影響があるなんて...
考えようによっては,よく効く薬ほど,副作用を覚悟するものでもあるよね.ダニの防除を何よりも最優先する必要があれば,こうした強力な薬剤を使うことに躊躇はないけれど,本当は診断に基づいて,もっとマイルドな効果を示す有機酸などから,症状に応じて適切なものを選べるのが望ましい.現行法の中では多用な薬剤・成分を自由に選択はできないから,巣板の更新頻度をあげるなど,残留を防ぐ工夫が必要になるだろう.

minilogo.pngこうしてみてみると,ミツバチと農薬の関係も単純ではないんだね.最近は増えているみたいだけど「農薬問題」の専門家はこうした広い見識で,農薬の開発指針とかを訴えてくれたりはしないんだね.
残念ながら,彼ら自身が狭義の,特定の「問題」の専門家だということで,問題を自家生成することでその問題の専門家になっているので,あえて広範囲なものの見方はしにくいのかも知れないね.開発指針は専門外だから語らないなら,農薬の関係者の顔をするのもどうかなという気もするけれど.一方で,本当の意味で農薬を理解しているはずの人たちの意見が一般向けにはなかなか出てこないのも,そうした専門家さんたちに出番を与えることになっていると思う.そのことも,考えようによっては,ミツバチにとって残念な状況というしかない.
そうそう「専門家」という人種に関しては,こちらとかこちらのブログも参考になるから見てみるといいかも.


minilogo.png本当の意味での農薬の専門家の方々,ミツバチは人を恨んだりはしないので,ぜひともいろいろな情報提供をして下さい.客観的な情報なしに,ミツバチが救われる道はないんです!

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2010年07月27日

カボチャ畑で待ってるわ

国分寺フィールドのかぼちゃ畑の様子を見に行かねば…と思いつつ、太陽がコワイ。でも、そんなことは言ってられない!と、炎天下の中、決死の思いで行ってきました。

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かぼちゃ畑への道。
ニョロが出ませんように…。
炎天下の中をうろうろするほどニョロはおバカじゃないか。

じゃーん!かぼちゃ畑!
すっかりかぼちゃの森と化している。

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「借りぐらしのアリエッティ」風ショットです。
お!実がなっている!

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よく見るとあそこにも、ここにも。

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このまま無事に育ちますように。
5種類ぐらい植えたから、実もいろいろ。

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やはりミツバチたちが働いているところを見なくっちゃねぇ。
でもね、かぼちゃの花が咲くのは朝の6時から7時の間だけ。
だから、どうした!ですよねぇ・・・。
近々、早起きするか。

この畑に行くまではアスファルトとコンクリートの都会の街並みを行く。
空からはもちろん、壁からも、足元からも熱気が押し寄せてくる。
風も生温かい。
なのに一歩畑へ向かう森の中に入ると、一気に暑さが弱まる。
吹く風も冷たくなる。
大地と緑の尊さをあらためて知るかぼちゃ畑なのでした。


posted by みつばち at 14:37| Comment(2) | TrackBack(0) | みつばち百花PT@国分寺 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月26日

かつてオーストラリアにミツバチは生息していなかった!?

佐々木先生の「ミツバチからみた花の世界」の第2部を読んでいたら、「かつてオーストラリアと小笠原にはミツバチはいなかった」とあって、あら、びっくり。

こうなると、すぐにJunbeeを質問攻めにしたくなる。

「オーストラリアにいなかったんですね!」

「まあね。そーゆー言い方をすれば、アメリカ大陸にもいなかったわけで…」

「ええっ!アメリカ大陸にも!?」

「いつの時代かによるけど…」

「えー、そうなの、そうだったのぉ!なら、受粉はどうなるわけ!?」

「あ、ミツバチはいなくても、ハナバチはいたわけだから…」

あ、そっか、そうでしたね。
ついほかにも虫がいることを忘れてしまう。

落ち着いて考えてみれば…、
オーストラリア大陸とアメリカ大陸にミツバチが持ち込まれたのは16世紀のこと。もちろん白人が上陸したときに持っていったんですね。
ん?巣箱を船で運んだ?
数か月を要したわけで…。まあ、給餌すれば大丈夫か。
ミツバチを連れて海を渡ろう!と思うところがすごいなあ。

とにかくそれまではアボリジニも、アメリカンインディアンもハチミツの味を知らなかったというわけね。
その後、1850年代にアメリカのラングストロスが現在の巣箱の原型を考案し、近代養蜂の幕開けとなったのだから、歴史は面白い。そして、いまではそのアメリカをはじめ、世界中でミツバチに農産物の生産を大きく依存している。

人類の発展とともにミツバチも数の上では発展してきたわけで、ミツバチは人類と寄り添って歩んできているんですね。
辛口ミツバチが、「だからさあ、もっと大切にしてよ。長い友達なんだからねっ!」と言いそう。

さて、昨日はみつばち百花の理事会を開催し、そのあと、みんながみつばちの庭に来てくれました。

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ニラをキバナコスモスにしようとか、ダンギクもいいよね、とか、みんなで相談。だんだん充実中のみつばちの庭です。

冒頭のめちゃくちゃな会話は、そのあとの、あとのワインバーで。
百花メンバーはお酒好きが多くて、おまけに強い。
少々酔った頭で「オーストラリア?アメリカ大陸?」なんてやっているわけで、結局、疑問は残ったままで終わったのでした(笑)
おまけに南米はどうだったのか?ニュージーランドは?と疑問は次から次へと…。





posted by みつばち at 08:01| Comment(0) | TrackBack(0) | みつばちの庭@三鷹 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月22日

ミツバチファン必携の書、ついに登場!

ついに出ました!
佐々木正己先生著「蜂から見た花の世界」です。

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知りたかったことが網羅されていて、疑問が解けるし、新たな発見はあるし、得た情報が整理される。あー、待っててよかった…。
掲載されている花の種類は680種、1600枚の画像。その画像すべてに開設がついています。
ミツバチファンにとっては、秘蔵写真満載の、まるでスターの詳細プロフィールですね(笑)

よくこれだけの花に訪れるミツバチのショットを撮影されたものだと思います。
最近は花を見ると、ついミツバチを探してしまい、見つけるとデジカメで激写してしまうけれど、このチャンスはそういつもあるわけではない。花が咲いていても蜜を流している時間は限られている。咲いていても天気がよくなければミツバチは来ない。と、ごく限られたチャンスで訪花が確認できるのですから。
あと書きに書かれているように、スズメバチに邪魔されることも多々あったそうです。スズメバチが直接邪魔をするのではなく、ミツバチが存在にピリピリしていて、すぐに逃げてしまうのだとか。
ちなみにスズメバチの一つの巣の働き蜂が1日におよそ1000匹のミツバチを持ち帰った記録があるとあります。そりゃあピリピリしますね。

いいことずくめの本書ですが、特にみなさんにぜひ、じっくり読んでもらいたいのが、第2部の解説部分です。
ミツバチの生態や花との関係性などが、とてもわかりやすく書いてあって、おまけにとってもおもしろいです。びっくり!そうなんだ!知らなかった〜!の連続。

カバーにもあるように、この本をじっくり読めば、「ヒトと自然との向き合い方」が大きく変化していることがうかがえ、ミツバチ減少の問題点がおのずと明らかになってきます。
あと書きに先生も「ヒトの食環境もそうであるが、ミツバチの食環境も過度な偏食やサプリメント頼りにはさせたくない」とおっしゃっています。

私たちも、この本を参考にして、ミツバチの生息環境の改善をいっそうめざしたいと思います。

13000円+税とちょっとお高い本ではありますが、一家に一冊あれば、ミツバチとの関係だけでなく、花との関係ももっともっと濃くなること間違いなし!です。
より詳細な紹介は、みつばち百花の「みつばち百科 図書」のこちらにあります。ご参照ください。



ラベル:蜜源 花粉源
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2010年07月19日

スギだって行きます! (調査:済州島編)

日本では花粉症の原因というので嫌われるスギ.あの大量の花粉をいっそミツバチが集めて利用してくれたらいいのにと,そんなときに限ってミツバチって役に立たないねっていいたげな目線が向けられます.

さて,海南島の次の調査地点は,韓国,済州島.ここで何とスギに頻繁にミツバチが訪れていました.スギの樹脂を採集してプロポリスを作っている?とにわかに調査団は興奮したものの,実際は...


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スギを訪れるセイヨウミツバチ.そこには何が?


スギの樹脂も利用するかも知れないけれど,今回は少なくともハズレだった.調査の目的からすれば残念だったけど,これはこれでまた新しい発見.
minilogo.png期待を持たせて申し訳なかったけれど,今回集めていたのはカイガラムシが出す甘露.甘露を原料にミツバチが作るハチミツは日本ではなじみがないけれど,ヨーロッパではモミのハチミツとかが有名.ハニーショップなどで,もみの花から集めた蜜ですよなんていわれることもあるけれど,それは間違い.アブラムシが樹液を吸って,不要な部分,といってもまだまだ甘味が残っているものを葉の上に落としていくのでこれを集める.甘露を原料としているから甘露蜜って呼ばれてる.

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白く見えるのがカイガラムシ(上の写真でもミツバチが接近している右下の方に姿が見える)


minilogo.png日本でもクリなどでミツバチが葉の上に落ちた甘露を集めることはあるけれど,量的に少ないから,これだけでハチミツはできない.済州島でもこれでスギのハチミツが採れているわけではなさそう.ただ,済州島は,スギもあるし,日本と植生が大きく変わらないから,セイヨウミツバチとしては同じようにやっていけそう.でも,実は小さな島だけど標高差が大きいから,気候的な変化にも富んでいる.そんなこともあってか,この島の人たちは,けっこうミツバチを大切に飼っていてくれるって印象だった.屋根付きの蜂場も多かったし.
確かに.みんなミツバチが好きそうだった.この写真の二人,夫婦で調査にも協力してくれたんだけど,奥さんが煙をかけて,ご主人がむだな巣や王台を切り取ったり,息が合っていてうらやましかった.継ぎ箱を外すのも再度載せるのも二人で力を合わせてで.今回,調査に関して全面的にお世話になった済州島養蜂協会の会長さんも,まだ若いけど,すごくいい人だった.標高15mから580mまで,いろいろな蜂場を案内してもらえた.


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韓国も巣箱は独立ではなく,ラインに並べる傾向が.巣箱のの上には雨よけや断熱材が乗せられていることが多い.


植生が近いことで海外に来た感覚に乏しい韓国.日本から一番近い国だけど,文字が読めないので中国よりも気分的には距離を感じる.ミツバチ関係で日本と雰囲気がちがったのは,サボテンでの採蜜.葉の先端にラディッシュのような赤い実のなるサボテンの花は黄色.味見させてもらったけど,さわやかな酸味がやや強いハチミツでした.

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花粉は粒径が大きいのか団子にして持ち帰らないけれど,おしべの根元まで潜っては蜜を集めてた.


minilogo.pngミツバチは同じセイヨウミツバチなんだけどね.飼われている地域でそれぞれちがうから面白いでしょう.ミツバチは自然を相手にしているから,たいていの環境の変化にはついていける.文字が読めないとか,そういう問題で悩んだりはしないもの.初めて出会う花だって,すぐに蜜や花粉の集め方くらい覚えられる.人間とどっちが賢いかな?
そういわれると身も蓋もないけれど,同じ次元で,食べ物に関していえば,韓国料理は美味しくて,日本人の口に合うし,食べ方にも共通点は多い.これを美味しいと思う人なら,共通認識あるはずだから,何を食べても安心できると思うし.お茶碗は持ち上げちゃいけないとか,そういった食べ方は,韓国の人に習ったけれどね.箸が平たくて重くて持ちにくいとか,焼き肉は日本のは薄すぎておいしさが今ひとつだとか,そういう評価もちゃんとできました.調査の成果は,そういう意味でもたくさんあったということで....

posted by みつばち at 20:01| Comment(0) | TrackBack(0) | ミツバチの気持ち by Junbee | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

草食系でも、肉食系でもない、ミツバチ系女子の誕生!

夏真っ盛りです。
以前、お伝えした長野県富士見高校養蜂部から、最新の活動報告がありました。まさに青春真っ盛り〜!
ミツバチと一緒にあつーい夏をすごしているようです。

次の北信越大会に向けて、かなりプレッシャーですが、みつばち百花の方々、またみつばちさん達に喜んでもらえるよう想いを込めて発表してきます。

期待してまーす!


また「ミツバチの庭」完成おめでとうございます。とても素敵なお庭ですね。みつばちさんが訪花したら教えてください。とても興味があります。

ありがとう!
でも、この庭でミツバチを確認したことがないんですよ。
すぐ近くのハーゲンベルギアの生垣には来ていたから、いないことはないのだけれど…。

ここ数日、みなさんが素敵な活動を沢山している間、私達のみつばちさんも多くの変化がありました。
まずは、私達の友達です。餌をあげると喜んできます。


私達のお友達.jpg


手乗りミツバチ、ね!

内検の時は、面布をつけます。

巣枠の内検.jpg


めっちゃたのしそう!

其の1 本校初!みつばちさんの分蜂。
みんなで、みつばちさんの渦の中に入り、自然に帰っていくみつばちさんを追いかけました。


本校初分蜂.jpg


周囲に自然がたくさん残っていると、帰るところがたくさんありそうでイイネ!

其の2 巣箱の中がみつばちさんで満杯状態。暑くて外で涼んでいます。

暑いよ〜.jpg


そうそう、ミツバチも暑いと涼みに出てくるんですよ。


そこで、換気口を増加。
すると、1センチの穴からみつばちさんがこんにちは!キャーかわいい〜


穴からひょっこり.jpg


ミツバチは小さな穴が大好き。
そうか、こんな感じで覗いているんだあ。
かわいい〜!!!

また、継ぎ箱をつけてあげました。 かなりかっこ悪いですが・・・

継足し巣箱.jpg


マメですねー。

其の3 ショック!みつばちさんの「大量蜂児捨て」

ショック.jpg


原因追求・対策のため、
@蜂児の調査
A巣箱内外に温度計設置
Bスムシの調査
C本校農薬散布の現状調査
D多少の給餌をしました。


しかし、ショックの中でも新たな発見! 蛹の成長過程が確認できました。へぇ〜、はちさんの触角って後半の過程で形成されるんですね。(


蛹の成長過程.jpg


なんとすばらしい観察力!


其の4 私達の赤そばが花を咲かせました。さて、私はどこでしょう?

赤そば畑で.jpg


みつばちさん訪花!
感動の瞬間です。


赤そばに訪花.jpg


愛されているなあ〜

同養蜂部では、蜜源・花粉源植物の増殖として、チャイブの種子採りや金稜辺の培養、卒業記念の記念樹として毎年後輩たちに残す樹木の選定などにも着手。

外敵・農薬の学習と対策チームでは、スズメバチさんもみつばちさんも“感情を持った生き物”両者を傷つけない方法を考え、「なかよし君」を作成しました。また、シャーレでスムシの飼育を試みています。

ん?これってどんなもの?

このほか、富士見高校みつばちさんキャラクターの作成や、ブログ開設をはじめさまざまな企画を計画中。
なんと8月8日には、はちさんの日祭りを開催するそうです。
内容は採蜜と、できれば、はちさん劇場 第2話 計画中だとか。

実はみつばち百花が10月31日に予定しているハロウィンかぼちゃパーティのイベントでは、はちさん劇場の開催をお願いしています。

と、書ききれないほどの活動内容で進化しつづける富士見高校養蜂部。
養蜂家といえば「おじさんたちの趣味」というイメージを払拭し、女子高生と養蜂という新たなジャンルを築きつつあるかも。それも持続可能な養蜂という王道を、です。
次の波は、女子高生(あ、部員にはもちろん男子もいます 笑)と養蜂に来るか!うん、きっと来る!

草食系でもなく、肉食系でもなく、ミツバチ系、ただいま、正道を驀進中です。




ラベル:長野県
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2010年07月14日

祝!みつばちの庭、完成!と県大会優勝!

植物の活きる力ってすごい!
ほぼ一カ月前の様子が↓

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昨日がこれ↓

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すごい繁り方でしょ。が、画龍点晴を欠いておりました。
それは看板!

そして、今日、ついにBEE GARDENあらため「みつばちの庭」が完成!

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ハニカムプランターと同じく、うがちゃんお手製の杉板の看板をついに設置しました。
ハニカムプランターの方は、↓

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ヒメイワダレソウがかなり図々しくはみ出しつつあります。

祝!完成!みつばちの庭、です。

祝といえば、もうひとつ。6月にこの庭づくりのお手伝いに来てくれた長野県富士見高校養蜂クラブから、朗報が届いています。少し前に連絡をもらったものの、先週の初のイベント出店でドタバタしていてアップするのが遅れてしまいました。

農業高校による研究発表の全国大会の地区予選が今、実施されています。その県大会で最優秀賞を受賞したそうです。テーマはもちろん養蜂です。

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先月、私たちの活動を見学に来てくれたとき(そのときのレポートはこちら)、ミツバチの視点で自然環境を捉えなおそうというアプローチにとても感銘を受けて、そうした視点をしっかり取り入れた発表にしたということです。

次の山場は、来月、新潟県で開催される信越大会。
破竹の勢いでたぶん突破、でしょう。
確信しています。




posted by みつばち at 14:32| Comment(0) | TrackBack(0) | みつばちの庭@三鷹 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月12日

初の出店が無事終了しました!

今日は、荒れ模様のお天気です。
昨日は雨かとドキドキしていたら、くもり空のまま4時に終了。そのとたんに雨が降ってきました。なんてラッキーなの!!!

みつばち百花として初めての出店でした。

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こんなにかわいいお店が出現!
美穂事務局長の激写したミツバチと花のナイスショット。
akarizmのchina2さんによる百花オリジナルキャンドル、
ニホンミツバチの蜜蝋キャンドル、
希少な採れたて蜜柑のハチミツ
ヒメイワダレソウやイブキジャコウソウ、キバナコスモスといった蜜源植物の苗など、にぎやかなお店になりました。

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かわいいキャンドルでしょ。
「こんなにかわいいキャンドルは見たことがない」と言ってくださる男性(!)の方もいらっしゃいました。

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ちゃんと百花のみつばちマーク入りです。
ご希望の方には、キャンドルセット1200円(蜜蝋キャンドル+ミツバチの20円切手+世界のミツバチの切手のポストカード5枚)でお分けしました。

花型のキャンドルは、ニホンミツバチの蜜蝋キャンドルです。
いずれも好評だったので、ネットでも販売しようかと検討中です。

そして、オリジナル・ハニカムプランターの登場です!

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東京はちみつクラブのときにつくったコルクボードの看板が再登場。
カラミンサの花には、こんなかわいいお客さまがやってきました。
たぶんハキリバチ?

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かなりお気に召したようで、午後、ずーっといましたよ(笑)
お隣のキバナコスコスには目もくれないところをみると、カラミンサの流蜜時間なのかもね…と、百花メンバーならではの視点で見守っていました。

フリーマーケットの会場では、みんな、それぞれのスタイルで野菜を中心に販売していました。

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このマーケットは、今後、ブラッシュアップして、また、開催される予定です。
みつばち百花は、今回の出店でとっても貴重な体験をすることができました。
私たちもブラッシュアップして、ミツバチのことをもっとみなさんに理解してもらえる機会をつくっていきたいと思います。


posted by みつばち at 11:59| Comment(0) | TrackBack(0) | みつばち百花プロジェクト | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月10日

エゴノキの秘密

ミツバチに感心をもたなかったら、ツタの花なんて永遠に見なかっただろうなあ。
葉のかげでひっそり咲くとは、奥ゆかしい。壁をつたってどこまでも図々しくのびていくくせに。
でも、やっぱり不思議。どうやってミツバチは時間差を気がつくのかしら。ほぼ一期一会の花たちなんだけど。

かぼちゃ畑でこんなものに出会いました。

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花?

でも、エゴノキの花の時期は終わったし、花はもっと小さいし…と思っていたら、

「それは虫です」と佐々木先生。

むっしーっ!

どう見ても花に見えるけど。

と先生が花びら状の部分を割ってみたら、中にアブラムシがびっしり。ぎゃーっとなって、写真を撮るのを忘れました。こういうときにちゃんと写真を撮るのが探究心というものでしょ。でも、「びっしり」って弱い。。。こういうときにかつての虫嫌いが再浮上する。事務局長がいたら、根性入れて撮っていたはず。

これはアブラムシがエゴノキの遺伝子を操作させてこんなものを変成してしまうそうです。
ググッてみたら、「エゴノネコアシ」と呼ばれているとあります。
これをつくるのは、エゴノネコアシアブラムシというやつです。
わかりやすい名前です(笑)
どう見ても花に見える。自分たちの住処を植物に作らせてしまう。
おそるべし、アブラムシ!

ここを出たあとは、アシボソというイネ科の植物に移動。要するにエゴノキとアシボソが一緒に生えているところをうまく利用するというわけ。

エゴノキはというと、種はこんな可憐なものだけれど、サポニンを含んでいて有毒。なので魚毒として、かつては川などで魚捕りに使われていたそうです。

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私たちの傍らで着々と植物も虫も生き残りをかけた戦略で、闘いつつ、共存しつつ命を営んでいるんですねぇ。。。

エゴノキの本当の花。

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蜜源・花粉源植物です。
実はとってもエグイから、エゴノキと付けられたとか。
でも、蜜はとっても甘い。有力蜜源です。




2010年07月09日

合言葉は昼下がりのツタで…

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真夏の昼下がり。
ツタに蔽われた壁。
誰もツタなど見向きもしない。
が、そのとき、佐々木先生が…

「ちょうど2時半ですね。ミツバチが集まるころですよ」

どこにミツバチがいるの?

と、目を凝らしてみたら…

いた、いた。たーっくさん!
あそこにも、ここにも。
羽音もブンブンしている!

つたは、蜜を出す時間が2時半から3時と決まっているそうです。
それをめがけてちゃんと訪れるミツバチはどうやって知るんだろう。

ミツバチの学習能力はかなりのもの。
生まれてから、約20日間は巣箱の中の仕事をして、最後の10日間で花蜜や花粉を集めに出かける。だから、次の世代に申し送りはないはず。巣から飛び出して、花に行き、そこでいろいろな情報を集め、花ごとに異なる収集方法を考え、実行し、巣に持ち帰る。

ツタが2時半から3時にしか蜜を出さないなんて、どうやって知るんだろう。

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美穂事務局長の苦心の作です。

肝心の花は葉の裏だから、そばに近寄らないとミツバチは見えないし、葉を裏返せば、逃げていく。
おまけにツタは壁を垂直に這っているわけで、カメラマン泣かせのツタとミツバチなのだ。

そんな中でもめげずに激写した事務局長はエライ!
事務局長ががんばっている間に私たちはかぼちゃ畑へ。

あっらー!!!
一面のかぼちゃ畑になっている〜!

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「雌花が少ないなあ」と先生にいわれ、ちょっと心配。

「ま、これからでしょ」といわれ、ちょっとほっとする。

かぼちゃ、できるかなあ。
ミツバチがお仕事、してくれるかなあ。
ツタは2時半〜だったけれど、かぼちゃは朝の6時ごろに蜜をたっぷり出す。
ここは朝、一番にチェックだな、なんて前日に考えるのかしら。

ミツバチの学習能力、すごく不思議です。

このかぼちゃ畑でまた「ええっ!」というものに遭遇。
それは、また、明日。


ハニーウォークレポート2 日本ミツバチはマッチョ?オンナの子なんですけど…

明後日のベジタブル・フリーマーケットは、お天気が不安ですねー。
初めての出店なので、みんなで力を合わせて準備に励んでいます。

さて、先日のハニーウォークレポートの第2弾です。

「ミツバチは、1分間に250回羽ばたいています」と佐々木先生。

250回!

そんなに細かく肩を震わせているのか!
それってものすごいことじゃないの?と、これを書きながら検索してみたら…

千葉大学工学部電子機械工学科の劉浩教授の「昆虫の飛行を解明する」というインタビュー記事を見つけました。

「飛行機、ミツバチ、チーター、人間が競争(ミツバチの体長に縮小してスピードを換算)すると、圧倒的にミツバチが速い」とあります。

す、すごい。

時速50kmで飛ぶミツバチに対し、飛行機は0.2km、チーターは1.4km、人間は0.16km。
おまけに安定飛行の制御ができていると。詳しくはこちらをご覧ください。

佐々木先生によるとニホンミツバチの肩の筋肉はとても発達しているそうです。
なるほど!だから、小さい穴に吸い込まれるように入っていけるのね。

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みんながカメラを向けているのは、山門の足の部分にある穴にニホンミツバチが自然営巣しているからです。ニホンミツバチは、こういうところが好きなんですねー。

そういえば、カフェスローの土台にある排水溝跡は、小さな直径3センチほどの穴。そこを上手に、軽やかに出たり入ったりしている。

肩の筋肉が強いから、木のうろや神社の片隅、石の隙間などに営巣できるというわけなんですね。






2010年07月05日

国分寺ハニーウォーク・レポート1 ミツバチの胃は、ソーシャルストマック

昨日のハニーウォークは、とっても蒸し暑いなかでのウォーキングとなりましたが、それに負けないくらい熱い内容で、参加者一同発見の連続でした。
さすが佐々木先生です。
ミツバチにとどまらずハナバチたちのことまで!

今回、衝撃の1コマ。
全員、くぎ付けです。

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バシバシ、シャッターが…

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日本ミツバチの1匹に「ごめんなさい」をしつつ、お腹を見せてもらいました。

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このキラキラ輝いているしずくがミツバチの胃です。
花の蜜がたっぷり入っています。

「ミツバチの胃はソーシャル・ストマックです」
貯めた蜜を自分のものにするのではなく、巣に持ち帰りみんなのものにする。そのための胃袋だということ。

一匹はみんなのために…なのです。

ふとサムライニッポンたちの記者会見のときの笑顔を思い出しました。
サッカーだけでなく、国のことも、自然環境のことも、エネルギーのことも、今、私たちに必要なのは、力を合わせること、ですよね!
でも、人間にはなかなかできないから、選手たちの笑顔がまぶしく見えて、感動を呼ぶ。

このキラキラ光る胃の中の花蜜は、さらっとしていて、でも、植物とミツバチの苦労の跡がほのかな苦みとなったものでした。忘れられない味になりそうです。

はい、代表していただいちゃいました。ミツバチさん、本当にありがとう。この命、無駄にしないようにします。合掌。

驚きの連続のハニー・ウォーク・レポート、まだまだ続きます。


2010年07月04日

トウヨウミツバチの近代養蜂は「あたりまえ」

中国の海南省(海南島)にプロポリス関係の調査に行ってきました.この島で飼われているミツバチの大半はプロポリスを集めないトウヨウミツバチで,今回お世話になった現地の養蜂企業(海南卓津蜂業)の陳社長によれば,飼育している全22万群(!!)のうち20%だけがローヤルゼリー生産用のセイヨウミツバチで,あとはトウヨウミツバチとか.そこから得られるハチミツは年間50t,これに巣箱におびき寄せた野生の蜂から採るものが20t加わるそうです.数字には誇張も入ってそうだけれど,実際に蜂場を見て,巣箱の中身を見せられると,やっぱりすごいと思います.

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150群以上のトウヨウミツバチが設置されている蜂場.
このサイズの蜂場が全島に分布しているとか.


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蓋をかさ上げして,上桟部に無駄巣を作らせて蜜を貯めさせ,巣蜜として生産.
その後は枠内の上半分の貯蜜も切り取って採蜜します.

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トウヨウミツバチでは,あるいは熱帯ではどうしても水分過多となるハチミツ.
ここでは素焼きの甕(240kg入る)に入れて,2か月ほどで状態のよいハチミツにしています.
この甕が300個ほど瓶詰め工場内の貯蔵庫に置かれていました.

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無王群になった蜂群の手当法を村人に伝授する陳社長(右).

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私たちの調査に同行した陳社長は,道中,デジカメで撮影した画像をノートパソコンで村人に見せながら,海南島の養蜂の可能性を熱く語ってました.
商売ということで熱が入るのはともかく,こうしたデジタル機器の効果的な使い方ができている点には舌を巻きました.


もちろん,トウヨウミツバチはタイでもネパールでも,30年以上前から近代的な,可動巣枠式の巣箱で飼われてきました.インドや中国ではそれなりの技術論も出版されているし,その技術をダウングレードしながら、つまり伝統養蜂との中間技術の開発をしながら,各国の村落開発での養蜂振興は進められてきています.日本では,最近,ニホンミツバチの飼育技術論がにぎやかなようです.その点どうなのか,辛口ミツバチと検証してみましょう.


minilogo.png日本はもともとはニホンミツバチさんだけで養蜂をしていたんだよね.で,明治10年にセイヨウミツバチが来たときに近代養蜂技術も一緒に伝わったのでは?
もちろん.技術が普及したのは,明治22年に,農学者としてアメリカで学んだ玉利喜造さんが近代養蜂を持ち帰って『養蜂改良説』という本を出してから.これがニホンミツバチの養蜂を近代化しようとした第一歩だっただろう.ただ,結果はうまくなかったので,それ以降,養蜂はセイヨウミツバチ一辺倒になっていった.

minilogo.png近代養蜂方式でのニホンミツバチの飼育はその後は行われなかったの?
まったくなかったとは思えないけれど,確立はしていなかった感じだな.玉川大学でニホンミツバチの研究を始めた頃は,ニホンミツバチの飼育自体が貴重だった.専用道具もなく,セイヨウミツバチの箱と巣枠を使ってたけど,よく逃げられていたっていう印象だなあ.ニホンミツバチの飼育や技術論が盛んになったのはこの20年くらいのことじゃないかな.それぞれ独自の完成形を導いて,技術的な交流がなく,全体的な技術向上に必ずしもつながっていないのが残念といえば残念なところかな.

minilogo.png日本以外ではニホンミツバチさんのお仲間のトウヨウミツバチは飼われていたんだよねえ.
インドや東南アジア,中国など,どこでも産業としての規模で飼われていた.伝統養蜂が中心の地域もあるけれど,その中でも部分的な近代化は入ってきていた.自分の目で技術体系を確認したのは20年前のタイ.実験用のトウヨウミツバチを分割して立ち上げたり,車で長距離運んだり,観察巣箱に入れて長期間飼ったり,実験スケールとはいえローヤルゼリーも採集できていた.どれも,巣枠で飼われていたから,そういうことが可能だった.どんなこともほぼごく当たり前に行われていて,最近問い合わせの多いニホンミツバチの趣味飼育者からの技術的な質問は,例えばこうした地域でトウヨウミツバチを飼っている養蜂家ならすぐに答えられそうな感じがする.

minilogo.pngニホンミツバチ(トウヨウミツバチも)さんを近代的な方法で飼うと何かいいことがあるの?
いろいろなメリットがあると思う.養蜂産業の中で用いる産業動物をセイヨウミツバチから地場のミツバチに置き換えるというのが,たぶん各地の究極の目標だろう.すると,ミツバチ自体の育種も必要で,そのためにも,飼育技術の近代化は不可欠視され,セイヨウミツバチで確立している養蜂技術を地場のミツバチに移転できるように工夫が払われていた.人工分蜂とか,合同とかね.枠を利用すると,採蜜時の巣の損失を低減できるから,繰り返し採蜜による生産性向上もひとつの目標だっただろうし.

minilogo.png最近,ニホンミツバチを飼おうという話が多いけれど,それにはどんな意味があるの? 近代的な技術でなければダメなの?
価格的に高価なハチミツを採ることが主眼という意味では,近代的である意味合いは小さいかもね.野生のものを利用する場合,動物自体のコストは小さいから,もともと収益性は高い.したがって,伝統的な巣箱でよければその方がよいといういい方もできる.産業動物としてセイヨウミツバチを置き換えるまでにはまだ長い道のりがあると思うけれど,その場合は,やはりセイヨウミツバチで行われているような近代的な飼育方法の導入や,それに耐えるミツバチの品種改良も不可欠だろうし,いろいろ飼って,適性のあるミツバチを見いだすことには意味が出てくるだろう.あと,少し位置づけが違うけれど,ニホンミツバチを環境指標として考えての飼育もあるようだね.

minilogo.pngでも,ミツバチは環境指標性がないとこのブログでも書いたばかりだよ?
ニホンミツバチは基本的には野生の生き物だから,ある空間にどの程度の生息密度があるか,その推移を含めて調べれば,それなりに意味のあるデータは得られる.環境がどの程度のミツバチを扶養可能かということは,相対的な資源量を示すことにはなる.

minilogo.pngでもそれはニホンミツバチさんにとっての資源量を評価しただけで,全体的な生物多様度まではわからない.ミツバチだけでやっていけているわけではないんだし.
そりゃそうだ.ただ,ミツバチが多様な植物を利用するという前提ではまったく意味がないわけではないだろう.一方の,動物の多様性という観点では,あくまでも推定するに過ぎないし,資源をめぐっての競争の勝者(不戦勝のことも多い)を見ているだけだったら,ニホンミツバチがいるから生物多様性が高いとかそういう言い方はできない.その点では,環境の全的な指標にはなり得ないね.

minilogo.png野生のものにはある程度指標性があるとしても,飼っているミツバチでは環境を指標することはできないんだよね?
どうだろう,今回見てきた海南島の養蜂現場では,100〜150群ものトウヨウミツバチが一つの蜂場に置かれていて,ちゃんと養蜂業としての生産活動ができていた.一か所に10群程度飼育できることと,100群飼育できることには,量を超えた質的な差異があると思えるけどね.それが,周囲の環境がどの程度ミツバチを養っていけるか,資源環境としての扶養力の評価にはつながっているんじゃないかな.

minilogo.png海南島にはそれだけのミツバチを養う資源があるということになるのかな?
熱帯から亜熱帯の気候で,セイヨウミツバチには厳しい環境だろうけれど,それでも採蜜もローヤルゼリーの生産もできている.そのことは,ひとつの事実として環境を評価する尺度として利用できるだろう.ただ,ニホンミツバチに関してはその点の評価はまだ難しいかも知れない.トウヨウミツバチとニホンミツバチもちがうだろうから,海南島の事例を日本の実情に当てはめるのも難しいだろう.その点で,飼える,飼えないというところではなく,繁殖成功率や,産業性指標を導入しないと,本当のところはわからないかも知れない.

minilogo.pngミツバチとしてもそこは危惧するところだよ.「飼える」というのが,人間の行為についての言及にとどまっていて,その成功性だけが優先して評価されるから,生きているミツバチの側の質,これも一種のQOLだと思うけれど,その部分は評価されないままになっている.この点は飼う立場の人たちに理解してもらいたいなあ.そもそも自分がミツバチを飼っている場所がどんな資源環境なのか理解できてないってことは,やっぱりミツバチの気持ちがわかってもらえてないってことだから...,そんなところでは飼われたくないんだ.
確かに,飼う前に知ることというのがたくさんあると思う.どんなに優れた技術や改良された巣箱でも,その場の環境が悪ければ,それを適正に評価することは難しくなる.どちらが先にあるべきかは火を見るよりも明らかなのに,そうした議論がないこと自体は,人間側の考え方にミツバチの視点は含まれていないことを示してしまう.ミツバチを扶養できる資源環境は,人間も利用している空間にあるという意識を持っていてこその技術論だろうね.飼えた,ハチミツが採れた,そんなところで議論を打ち切らないで,もっと大局を見るようにはして欲しいね.

posted by みつばち at 12:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 世界のミツバチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月02日

ベジタブル・フリーマーケットに出店します!

7月11日の日曜日、午前11時から代々木公園でユニークで、画期的なベジタブル・フリーマーケットが開催されます。

小さな農園生活を始めたいというアマチュアによる、アマチュアのための野菜と草花とアグリグッズのフリーマーケットです。そう!ありそうでなかった、そして、欲しかったマーケットが始まるのです!

企画は種まき大作戦のトージバ、運営は東京朝市アースデイマーケットです。みんな、Lazy Beeのお仲間たちです。
みつばち百花の活動を応援しよう!とサポートしてくれることになりました。

みつばち百花も初の出店をします。
このマーケットは手作りのものを販売しようというもの。ならば、ということで蜜蝋キャンドルを販売します。
とても希少な日本ミツバチの蜜蝋キャンドルもあります。

三鷹のBEE GARDEN(みつばちの庭)でとっても目立っているハニカムプランターも特別出店。予約も受け付けますよ。

このイベントはトーキョーウォーカーとも連動していて、最新号に事前記事が掲載されていますので要チェックです。
当日は楽しいブースをつくってお待ちしています!

7月11日はベジフリに集合!です。

posted by みつばち at 20:47| Comment(0) | TrackBack(0) | みつばち百花プロジェクト | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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