農家は、ミツバチを養蜂家からレンタルするか、買うかのどちらかを選択します。費用はどちらもあまり変わらないそうです。
イチゴ農家にとってミツバチは受粉してくれる大切な昆虫。
しかし、イチゴを育てるだけでも大変。ミツバチのことは専門外だから、世話をするところまで手が回らないのも現実。
25度以上にもなるハウスの中で、ミツバチたちは花蜜も花粉も少ないイチゴの花の中を来る日も、来る日も飛ぶことになる。そうなると、ちょっとイライラすることもあるし、ハウスのビニールに止まって休んでいることもある。
そんなときに忙しい農家の人が巣箱につまづいたり、ビニールをぎゅっと握ってしまったりしたら、ちくっと刺されてしまうことも。
お互いにイチゴを真ん中に必死なだけに、コミュニケーションが取れそうで取れない。人と虫、ですしねぇ。。。
シーズンが終わるころには、ミツバチは疲れきっていて、そのまま死滅してしまうことも多いそうです。
今回、お訪ねした福島県矢祭町のイチゴ農家の近藤隆夫さんと益子孝一さんのお二人は、3年前にミツバチの減少が騒がれ始めたころ、レンタルしていた養蜂家からのミツバチが途絶え、それなら自分たちで飼ってみようということになりました。ミツバチを死滅させることなく、元気なままでずっと使い続けていければ、経費も助かります。
そこで1群ずつを分けてもらい、トライしてみることにしました。
シーズン中のおよそ6ヶ月の間、ミツバチたちはイチゴの花だけだから、栄養が偏り、免疫力が低下してしまいます。それが死滅の大きな原因のひとつ。だから、元気でいられるように栄養を工夫してみたところ、今年は昨年よりも、とっても元気だとか。
同行した中村先生に巣箱を内検してもらいました。
「元気ですね。この時期にこれぐらいの数になっていれば、大丈夫でしょう」とのこと。
そう聞いて近藤さん、とってもうれしそう。
今までは、食料としてキナコをハチミツで固めたものを花粉の代用として、砂糖水を花蜜の代用としてあげていたそうです。
中村先生からは、大豆はミツバチにはあまりよくないそうで、花粉代用は市販のフィードビーにすることに。
砂糖水は、湿度が高いハウス内ではミツバチは巣に持ち帰った砂糖水をハチミツにするために水分を飛ばすことが大変になり、体力を消耗するのでやめたほうがいいだろうというアドバイスがありました。
お二人には、ミツバチのためを思ってあげていた砂糖水が、かえって負担になっていたということを知ることができたととても喜んでもらえました。
当初は経費削減が大きな目的だったといいながら、今ではすっかりミツバチにはまってしまい、元気に巣を維持してもらうにはどうしたらいいかと日夜、相談する毎日だとか。
巣箱も手作り!(私たちと同じです)
そんなお二人が昨年から始めたのが、シーズンが終わってからのミツバチのために花を植えることです。
ハウスの外には、福島にも春の気配が濃厚です。
春からの母群となる巣箱が無事越冬完了を迎えつつあります。
巣箱の周りには、蜜源植物であるオオイヌノフグリが満開で、ミツバチが訪問中でした。
近藤さんの家の入り口にある梅の枝にも、ミツバチの訪花が確認されました。
「うちのミツバチですよ」
これからはハウス内の温度は上昇し、ミツバチたちの消耗が激しくなります。でも、ミツバチはとりあえず元気な様子。この分なら、イチゴの終了時期にハウス外に出して、採蜜転用が可能になるかも!ハウスで利用したミツバチが、次年度用の母群に流用できれば、花粉交配にミツバチを必要とするすべての園芸農家にとって革新的なことになるかもしれません。もちろん、働くミツバチにとっても!
里山の春は、もうすぐそこまで来ています。
次回は、耕作放棄地が花畑に…
訪問記その3 ミツバチのために花を植えるイチゴ農家