中村先生からのコメントです。発酵の謎がかなり解けてきました。
発酵は酵母(酵素ではなく)によるものですが,ニホンミツバチのハチミツに酵母が多いかどうかは調べた研究がないように思います。一般に,ニホンミツバチのハチミツは熟成期間が長いことから微生物との接触機会も多く、酵母がたくさん含まれる可能性は理論的には支持されます。セイヨウミツバチでも高温多湿な地域で貯蜜期間を長くして生産されたものは発酵しやすくなる可能性はあります。
(我が家ではタイ産のハチミツが発酵を始めました)。
ハチミツは酸性で高糖度による高浸透圧で微生物の繁殖を防ぐ性質を持っていますが、酵母はこれらに耐性があります。また発酵過程で生成する炭酸ガスで酸欠状態を維持し、さらにアルコールを生成することで他の真菌(カビなど)類・細菌類との競争を有利に進めることができます。
ミツバチにとっては貴重な糖質を酵母に使われてしまうことになるので、発酵は防ぎたいところで、そのため水分を20%以下にすることをハチミツの保存要件して進化させてきました。巣から取り出されたハチミツが発酵するのは、空気中から吸湿してハチミツの表面水分濃度が上がることによると考えられます。また果実などを漬け込むと、水分が増すだけでなく、果皮上の酵母も入り込むため発酵が促進されます。
さらに「発酵の謎 その1」の事例のように結晶化によって、糖濃度に偏りができ、液層部分の水分が相対的に増えることでも酵母が勢いづきます。表面では当初は酸素があるために、まず酵母が増殖し、密栓状態ではやがて酸素が不足してきて発酵モードに入ります(アルコール臭がし始めます)。
シールのあまいビンやプラスチック容器では生成する炭酸ガスによってできた泡があふれたりしますし、泡ができはじめたハチミツ瓶を開けると、圧力で収縮していた泡が一気に膨張して中身があふれ出すことがあるので要注意です。
発酵すること=ハチミツの品質の悪さではありません。逆に加熱されていないことの指標ともなります。発酵を防ぎたいという場合には,一度短期的に冷凍するとよいかも知れません(酵母は凍結に弱いとされていますが,低水分下で死滅するかどうかは実はわかりません。また氷点下ではハチミツの結晶化は通常おきません)。
さて、みなさんのお持ちのはちみつはいかがですか?